(ブルームバーグ):SBIホールディングス(HD)の北尾吉孝社長は17日、都内で記者会見し、フジ・メディア・ホールディングス(HD)の事業モデル改革に向け、SBIの金融・IT事業とフジHDのメディア事業を融合させたいとする構想を発表した。意識や人事・組織改革の必要性も訴えた。
フジHD株式を持つ物言う株主(アクティビスト)の米ダルトン・インベストメンツは15日に公表した株主提案で、フジHDの改革を進めるため、北尾氏を含む12人を社外取締役候補として株主総会で選任議案に盛り込むよう求め、その筆頭に同氏の名前を挙げていた。

北尾氏は会見で、米国の先行例などを挙げ、国内でもメディアを巡る競争が激化する中、フジHDのメディア事業とSBIの金融・ITテクノロジーを融合していくことで収益拡大が可能だとする持論を展開した。フジHDが「敵対するとしたら徹底的に勝負する」とも述べた。
北尾氏はフジHDの営業利益は不動産事業に依存していると指摘し、本業のメディア・コンテンツ事業が大半を占める体制作りが必要だと強調。知的財産(IP)を軸とした「コンテンツプロバイダーとしてエコシステムを構築しなくてはいけない」と話した。政策保有株の売却による資金の活用も提案した。
ダルトンは株主提案の理由として、フジHDのガバナンス(企業統治)改革やメディア事業との関連性の薄い不動産事業の切り離し、メディア事業の改革などを挙げていた。北尾氏らは取締役選任の可否が決まる前に、自らの主張を公の場で説明するという異例の動きとなった。
北尾氏は取締役人事について、内部昇格を継続するのではなく、取締役相談役を務める日枝久氏の下で約40年間に及んだ企業文化を再構築すべきだと指摘し、フジHDが3月に発表した役員体制では不十分だと断じた。その上で、取締役候補についてはダルトン側と協議して見直すべきだとの考えを示した。
会見開始前まで前日比プラス圏で推移していたフジHDの株価は、会見が始まるとじりじりと値を下げ、一時8%を超えて下落し、5.7%安の3031円で17日の取引を終了した。
フジHDは同日夕、16日付で取締役選任に関する株主提案を受領したとし、「当社取締役会の意見は今後、真摯(しんし)な検討を経て決定次第、速やかに公表する」とのコメントを出した。
フジHD株5.83%を保有するダルトンは6月下旬に開催予定の定時株主総会で北尾氏のほか、ジャパンディスプレイ元社長の菊岡稔氏やダルトンの共同創業者であるジェイミー・ローゼンワルド氏らを提案する予定だ。
アクティビストで知られる村上世彰氏の長女である野村絢氏も筆頭株主としてフジHD株8.96%を保有する。
フジHDを巡っては、元タレントの中居正広氏が起こした女性との性的トラブルへの対応をはじめ、ガバナンスの不全が指摘されていた。3月下旬に取締役の大幅な入れ替えや削減を進め経営体制の変更を発表したものの、一部取締役が留任することへの批判が起きていた。
(フジHDのコメントを追加して更新します)
--取材協力:谷口崇子、古川有希.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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