米下院の中国特別委員会は、米エヌビディアに対し、中国の人工知能(AI)スタートアップ企業DeepSeek (ディープシーク)が、画期的な生成AIモデル開発に利用した恐れのある半導体の販売情報提供を求めた。

同委は16日公表した報告書で、ディープシークを米国家安全保障の「深刻な脅威」と位置付けた。報告書によると、生成AIモデルを支える「数万個のチップ」を取得する過程で、米国の輸出規制を擦り抜けた可能性がある。

ムールナー委員長(共和)らはエヌビディアに宛てた16日付の書簡で、2020年以降に499余りのAIチップを購入したアジア11カ国の顧客情報を要求。マレーシアとシンガポール、AIチップを最終的に利用する事業体を特に挙げ、4月30日を回答期限に設定した。

報告書が引用した分析会社セミアナリシスの情報では、ディープシークはエヌビディアのプロセッサー少なくとも6万個を既に保有し、米国の輸出規制に準拠しつつ中国向けに設計されたAIアクセラレータ「H20」をさらに数千単位で発注している。

AIアクセラレータは、AIアプリケーションの学習・推論処理の高速化をサポートするハードウエアであり、エヌビディアの15日の届け出によれば、H20製品も今後は対中輸出規制の対象になる。

エヌビディアは、米輸出規制に関し、政府の指示を忠実に順守していると発表資料で説明し、シンガポールのケースでは、同社製品は「中国ではなく、米国と台湾を含む他の地域に輸出されている」と主張した。

下院特別委の報告書は、ディープシークと中国政府の利害との深いつながりを指摘。同社とクオンツヘッジファンド「ハイフライヤー(幻方量化)」の創業者、梁文鋒氏にも言及し、政府系ハードウエア業者や中国の研究機関「浙江ラボ」と連動する「統合されたエコシステム(協調体制)」の一部と分析した。

「テキストを生成し、質問に回答する新たなAIチャットボットというイメージを打ち出しているが、入念な調査によれば、中国当局に収集したデータを送り、ユーザーのセキュリティーに脆弱(ぜいじゃく)性が生じている。中国の法律に準拠し、情報の検閲・操作をひそかに行うモデルも実行している」と懸念を示した。

ディープシークにコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。

原題:House Panel Calls DeepSeek a Risk, Presses Nvidia Over Sales (1)(抜粋)

--取材協力:松田英明.

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