トランプ米大統領は16日、関税、軍事支援の費用、「貿易の公平性」について日本と交渉するための会合に自分も出席すると、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で表明した。

ベッセント財務長官とラトニック商務長官も会合に出席するという。トランプ氏は「うまくいけば、日本と米国にとって良い(素晴らしい!)結果が得られるだろう!」と記した。

トランプ米大統領と交渉開始で合意した石破茂首相は、赤沢亮正経済再生担当相を日米交渉の担当閣僚に指名。赤沢氏は16-18日の日程で訪米することになった。

赤沢亮正経済再生担当相

赤沢氏は出発前の16日午前、「何が一番国益に資するのか、何が一番効果的かということを考え抜いて、しっかり国益を守る交渉をしていきたい」と訪米に臨む意気込みを記者団に語った。米側担当者と信頼関係を築き、双方に利益となる交渉ができるだろうとの見方も示した。

赤沢氏は昨年10月の政権発足で初入閣した。旧運輸省(現国交省)出身で、財務省や内閣府の副大臣などの経験を持つが、通商交渉の手腕は未知数だ。関税や非関税障壁だけでなく通貨政策、安全保障といった他の難題も立ちはだかる。

首相の最側近とされるが、自らは「石破総理の左腕」と位置付ける。1月のX(旧ツイッター)への投稿では「『右腕』を名乗ると怖い先輩たちににらまれそうだし、『参謀』だと『石破総理の頭脳』を自称しているようで僭越(せんえつ)の極み」と説明した。

第1次トランプ政権で通商代表部の交渉官を務めたデビッド・ボーリング氏は、赤沢氏の経験の乏しさを指摘し「今回の交渉は非常に厳しいものになるだろう」と述べた。一方、石破首相に近い存在であるため「交渉中の彼の発言は首相の意向を代弁していると受け取られることが多くなるだろう」と分析した。ボーリング氏は現在、米調査会社ユーラシア・グループの日本アジア貿易ディレクターを務める。

日米航空協定

赤沢氏は官僚だった1994-96年に日米航空協定の不平等性解消に向けた交渉に携わり、国益をかけた2国間協議を間近で見届けた強みがあると胸を張る。

旧東京教育大学(現筑波大学)付属駒場高校の同期でもある中谷和弘東京大学名誉教授は、航空協定を巡る交渉は日米経済摩擦の中でも最も難しい主題であったとして、「外交経験が乏しいという一部指摘は全く的外れだ」と語る。

赤沢氏が主導する関税協議は日本経済の行く末を左右する。米国は日本に対する上乗せ税率を24%に設定。その後、他国と同様に90日間の停止措置を講じているが、基本税率10%の関税に加え、日本の基幹産業である自動車や鉄鋼、アルミニウムには25%の関税がすでに導入されている。

みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは91年、赤沢氏とともに米コーネル大学で経営学修士(MBA)を取得した。「優秀で論理的、英語ができる」印象があると当時を振り返る。政府から具体的な交渉カードの言及がなく、赤沢氏が経験不足と受け止められていることで、市場の期待値は低く「早急な合意ができなくても失望とはならない」と話す。

八つの肩書

赤沢氏は60年生まれの64歳。84年に東京大学法学部卒業後、旧運輸省に入省した。秘書課や総務課企画官などを経て、2005年に退官。同年の衆院選に鳥取2区から立候補し、初当選した。現在7期目。祖父の正道氏と石破首相の父の二朗氏は同世代で、ともに自治相を務めた。石破首相は赤沢氏との関係を「先々代からのご縁」と語る。

高校で同期だった共産党の小池晃書記局長は赤沢氏について「自由な校風で育ち、一定の余裕や硬直的でない思考を培ったのでは」と話す。3月の国会では、中小企業支援に関する赤沢氏の答弁に小池氏が「同級生だから、あんまり言いたくない」と前置きして批判。出席者の笑いを誘った。小池氏は卒業後40年以上たっても「あの頃の気持ちはまだ残っているのかなというのがあったりする」と語った。

当選同期の多くが入閣を果たす中、赤沢氏は水月会(旧石破派)に所属し、非主流派の論客として総裁選に挑戦を続けた石破氏を長年支えた。赤沢氏の名刺には、再生相に加え賃金向上担当相、防災庁設置準備担当相など石破政権の看板政策を担う八つの肩書がある。

中学・高校・大学と同期だったIGPIグループの冨山和彦会長は、赤沢氏を「豪快に見えるが、芯は真面目で謙虚で勉強家」だと評価する。政治的に不遇な時間が長かったにも関わらず政策課題の研究や実績を積み重ね、難しい選挙も勝ち抜いたと語った。交渉の場では「誠実に粘り強くじわじわと筋を通すスタイルだという印象」だという。

90日の猶予期間のカウントダウンはすでに始まっている。ボーリング氏は日本のやり方について、非常に慎重で用心深く、しばしば交渉を引き延ばす傾向があるが、今回そのやり方は通じないとの見方を示した。上乗せ関税の凍結が終了する頃には、参院選が予定されている。

トランプ政権の関係者は、多くの国々が自国の関税を引き下げ、米国企業に対して自国市場へのより良いアクセスを認めるための交渉を望んでいると自信を示す。来週には韓国の代表団が、米国の通商当局との会談を予定している。

(最終段落に詳細を追加します。更新前の記事は15段落目の冨山和彦氏の肩書きを訂正済みです)

--取材協力:木下晶代、鈴木克依.

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