トランプ米大統領が打ち出す予算削減や悪化する景気見通しを背景に、英国で職を探す米国人が増えている。

求人検索サイト「インディード」のデータによると、英求人情報への外国からのクリックのうち、1-3月(第1四半期)はほぼ10件に1件が米国からだった。これは2023年4-6月(第2四半期)以来の高い割合。英国の求人に対する米国からの関心は、どの国よりも急激に伸びている。

特に科学分野の研究開発や管理職を求める米国人が増えているという。トランプ氏は大統領に返り咲いてから、研究や教育、インフラプロジェクト向けの連邦助成金を大幅に削減している。

2022年にニューヨークから移住したオックスフォード大学の腫瘍学教授、リチャード・ホワイト氏は、米国からの頭脳流出の兆候があると指摘。学問の自由や安定を求めて優秀な人材が米国外へ移り住んでいるという。

ホワイト氏は「科学者は何ができるか、どこに資金があるかに導かれる。米国は伝統的に学問の自由と資金提供に積極的だったが、トランプ大統領の就任以来、助成金審査委員会から援助を取り消された同僚もいる」と語り、「米国では現在、科学的な研究を行うには英国が安定した場所だと考えられている」と述べた。

今年に入ってからホワイト氏は、現在米国で学ぶ2人の学者のために、オックスフォード大学ナフィールド医学部にポストを用意した。米国時代の同僚は、ホワイト氏が「良いタイミングで移り住んだ」と冗談を言っているという。

インディードのシニアエコノミスト、ジャック・ケネディ氏は「米国が相対的に好調だったことから」、ここ数年減少していた米国人求職者からの需要が回復したと述べた。

英国で職を探す米国人の急増は、英国を避ける他国の求職者とは対照的だ。インディードのデータによると、第1四半期に英国の職探しを目的とした外国からの検索件数は長期平均を下回った。特にエンジニアリングやテクノロジー、ヘルスケアの分野における高給職に対する国外からの関心は大きく後退した。

ケネディ氏は「低迷する雇用市場と、移民政策の厳格化による影響が長引いていることが関係している可能性がある」とみている。

 

原題:More Americans Are Eyeing Jobs in UK Amid Trump Funding Cuts

(抜粋)

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