(ブルームバーグ):中国人民元がユーロに対し約10年ぶりの安値を付けた。トランプ米大統領の関税政策で対中貿易の流れが変化する可能性がある。
中国人民銀行(中央銀行)が相場管理を続けている人民元は今年に入り対ユーロで8%余り下落し、今月になると2014年以来の安値水準となった。
「トランプ関税」でドルに対する投資家の信頼が揺らぐ中で、ユーロは上昇。一方、米国の関税が中国経済に与える影響を緩和するため、元安進行が慎重に容認されるとの見方から人民元は値下がりしている。
米国の関税率が100年ぶりの高水準となったことで、中国の米市場へのアクセスが妨げられている。このタイミングで元安が進んでおり、その結果、中国の輸出が欧州に向かう可能性があるとみるアナリストもいる。

ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、ミシェル・ラム氏(香港在勤)は「大幅な関税導入により米国との貿易がほぼ確実に落ち込むことを考えると、元下落は中国の対欧州連合(EU)輸出をさらに後押しし得るという問題を確かに提起する」と指摘。
ただ、欧州はダンピング(不当廉売)を強く問題視しており、EUと中国は欧州市場に中国製品があふれるの防ぐ方法を見つけるかもしれないとの見通しも示した。
ブルームバーグ・ニュースによれば、EUは米国の関税への対応を見極めているが、トランプ政権の当局者はEUに課す制約の大半は撤回されないと示唆。トランプ大統領は、エスカレートする貿易戦争の解決に向けた交渉を開始するため、接触してくるよう中国に求めている。
中国側は今月、多国間主義と自由貿易を共に守るようEUに呼びかけた。EU首脳らは7月に中国を訪問し、習近平国家主席との貿易に関する会談を行う見込みだと香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は先に報じた。
バンガードの国際金利責任者アレス・クートニー氏は「グローバルな貿易の流れを含め、各国があらゆるものを再構築し始めると、短期的に中国から欧州への輸出が大幅に増加する可能性がある」と予想している。

原題:Yuan at Decade Low Against Euro Risks More Heat on Trade Flows(抜粋)
--取材協力:Vassilis Karamanis、Naomi Tajitsu.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.