京都フィナンシャルグループ(FG)は、トランプ米大統領の関税政策を受けて不安定化している金融市場の動向を踏まえ、日本国債など有価証券の残高を縮小する方針だ。貸し出しの増加に預金拡大が追い付いていない事情も背景にある。

土井伸宏社長はブルームバーグとのインタビューで、日米金利動向の見極めが難しく、資金の市場運用に慎重姿勢だったところに、米政権が大規模な関税政策を打ち出し、市場見通しがさらに不透明になったと指摘。有価証券残高(政策保有株除く簿価)は、償還を迎える国債への再投資などを抑えつつ、昨年12月末の約2兆4000億円から「2029年3月期までに2兆円くらいまでは落としていく」と述べた。

京都FGの土井伸宏社長

一方で、「もともと預金を集めて貸し出し、余りを市場運用するというのが地方銀行の考え方だ」と説明。その上で、預金残高に対する貸出金の割合(預貸率)が低い状態を「是正しているのが今の状況だ」と話した。

長引く低金利や貸し出し需要の低迷を受け、京都FGを含む地銀の多くは預金のかなりの部分を有価証券で運用してきた。しかし、昨年3月に日本銀行が利上げに踏み切り、預金残高と貸出金の差(預貸ギャップ)が縮まる中で変化が起きている。

企業の設備投資意欲の高まりなどから、京都銀行(単体)の24年12月末の貸出金残高は約7兆3000億円と1年で10%超増えたが、預金残高は約9兆4000億円と1%台の増加にとどまる。

土井氏は、米関税措置の動向や預貸ギャップの縮小状況により、有価証券を減らす方針を見直す可能性はあるとも付け加えた。京都銀の顧客には精密機械や電子部品などの製造業が多く、トランプ政権の関税政策の影響を大きく受ける可能性もある。同行はすでに特別融資の取り扱いなどを開始している。

政策保有株

京都FGは任天堂やニデックなど京都企業を中心に24年9月末時点(時価)で約1兆円の政策株を持つ。その額は京都FGの時価総額約6100億円を上回る水準だ。政策株の削減機運が高まる中、同社は昨年11月に、29年3月末までに時価で1000億円以上を削減する目標を打ち出した。

土井氏は「一般的な政策株に対する厳しい目が徐々に強くなっている。完全に無視はできない」とさらなる削減に踏み込んだ理由を話す。ただ、「2000億円や3000億円といった数字を出せたら良かったかもしれないが、本当は持っていたいのにというのがあった」と本音も語った。取引実績などから保有意義の薄れた銘柄もあるのは事実として、地元企業も見直しの対象になり得るとの考えを示した。

京都銀行の支店(京都市内)

土井氏はまた、他の地銀との統合の可能性について「具体的な話も頭の中にも今は全くない」としながらも、将来の選択肢から排除しない考えを示した。近隣府県も含めた地元地域の人口減少が避けられなくなっている現実も踏まえ、「いろいろな存続の仕方が金融機関にあると思う。その選択肢の一つとして、やっぱり経営統合というのはあるのだろう」との認識を示した。

京都FGのこの日の午前の株価は前日比5.1%高の2125.5円。TOPIX銀行業指数が同1.4%安で取引を終える中、上昇幅が目立った。

京都FGは京都銀などを傘下に置く持ち株会社体制に移行する形で23年10月に発足。その後、積水リースを子会社化するなど事業の多角化を打ち出している。中核の京都銀はもともと福知山市の丹和銀行として設立され、戦後になって京都市に本店を移転した。

(10段落目に京都FGの株価動向を追加して記事を更新します)

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