イエレン前米財務長官は14日、トランプ米大統領の関税政策について、根拠は「不明瞭で全く非合理的」だと述べた。また、中国は「この対立を徐々に緩和すること」を望んでいるとの見方も示した。

オバマ政権と第1次トランプ政権で米連邦準備制度理事会(FRB)議長も務めたイエレン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、最近の債券市場混乱とドル安は「信頼喪失」を反映していると指摘。ただ、連邦準備制度の介入が必要な状況には至っていないとの認識を示した。

同氏は「関税の撤廃や引き下げに向けた動きはプラス材料だが、非常に不確実性の高い状況にある」と語った。

関税政策の一部標的についてとまどいを示したほか、トランプ氏が「相互関税」と主張して掲げていた上乗せ関税は、二国間の貿易赤字を基に算出されたと指摘。米企業がサプライチェーンを中国から分散化したことで、貿易赤字が最近膨らんだ国を罰しているようなケースもあるとした。

イエレン前米財務長官がブルームバーグテレビジョンのインタビューで語る

「例えばトランプ政権がベトナムに対して何を求めるのか、私は困惑している」とし、「われわれは、中国に依存していた物品の生産開始をベトナムに積極的に働きかけた。国家安全保障の観点から、サプライチェーンの分散化を望んだ」と説明した。

中国については、もし米国も同様の行動を取るのなら中国は最近の貿易障壁の撤廃を望むだろうと述べた。対中関税は貿易をほぼ不可能にするほどの水準に達しているとし、この状態が続けば両国は事実上のデカップリング(切り離し)に陥ると警告した。

「これまでに導入した対中関税は、米家計にとって多大な負担になるだろう。もちろん、状況は日々変化している」と述べた。

投資家や政府、消費者はいずれも不確実性に直面しているが、米経済はなお力強く、現時点では連邦準備制度の介入が必要な状況ではないとの見解を示した。

「もし実際に金融安定への懸念が生じた場合、連邦準備制度はコロナ禍の初期に実施したような流動性プログラムの活用を検討するだろう」とする一方、「まだその段階ではない」と明言した。

原題:Yellen Says Trump Tariff Policy Misguided, Warns of Uncertainty(抜粋)

--取材協力:Kailey Leinz.

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