トランプ米政権の関税政策が引き起こした混乱は、新興国資産が今後さらに損失を被るとの見方を強めている。

ソシエテ・ジェネラルのストラテジストは、ほとんどの新興国通貨が下落すると予測。中国人民元は「小幅」の値下がりが見込まれ、南アフリカ・ランドや中南米通貨が安値で低迷する可能性が高いと警告している。

ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは、ドル安で支えられるのは恐らく、新興国通貨ではなく他の先進国通貨だろうとみている。

 

ソシエテ・ジェネラルのフェニックス・カレン氏(ロンドン在勤)らアナリストは、「新興国通貨は依然として下げているが、そのペースは鈍化するだろう」とリポートで指摘した。

MSCI新興国通貨指数は先週を5カ月ぶりの高値で終えたが、投資家への取材では、新興国通貨に対する悲観的な見方が強く、ファンドマネジャーらが貿易戦争に身構えていることが分かった。

 

コロンビア・ペソとインドネシア・ルピアが先週、新興国通貨の中で最も大きく下落。中国人民銀行(中央銀行)は14日、人民元の対ドル中心レートを2023年9月以来の安い水準に引き下げた。

ホールド・アラプケゼロで28億ドル(約4000億円)前後の運用に携わるタマス・チェル氏(ブダペスト在勤)は「たとえ最悪のシナリオが今現実にならなかったとしても、現在の不確実性はすでに損失を引き起こしている」と指摘。「世界中で投資意欲が低下している」と話した。

新興国の株式相場は大きく下落し、MSCI新興市場指数は先週4%近く下落。今年はトルコとインドネシア、韓国で政治的混乱が起こったことで、投資家は新興国市場への投資リスクを懸念するようになっている。

投資家は中国で追加の財政刺激策が実施されるかどうかを注視しているが、シンガポール通貨庁 (MAS、中銀)は14日、世界的な貿易摩擦が国内の経済見通しに及ぼすリスクを理由に金融政策を緩和した。

原題:Emerging Markets Face ‘Wrecking Ball’ From Tariff Turmoil (1)(抜粋)

--取材協力:Selcuk Gokoluk、Abhishek Vishnoi.

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