コメは切り札になり得るか
ベッセント氏が直接言及したことはありませんが、トランプ氏が繰り返し触れているコメ輸入は、交渉の切り札になり得るかもしれません。コメのミニマムアクセスといった制度の大枠は変えなくとも、現在、コメが足りないことは確かなのですから、アメリカ産のコメの輸入を増やすことは、理にかなっていると、私は思います。
100万トンあった備蓄米は、すでに21万トンを放出し、政府は、今後も毎月10万トン放出する方針を発表しました。つまり備蓄米は60万トンなくなり40万トンしか残りません。これでは不安です。現実問題として、国内で備蓄米を積み増すことは不可能なので、アメリカ産のコメを備蓄米として購入することも検討に値するのではないでしょうか。こちらの「求め」を、高く「売る」ことができるかもしれません。
良し悪しはともかくとして、トランプ政権との交渉では、トランプ氏自身の納得感が非常に重要です。相互関税の発表の記者会見で、トランプ氏がわざわざ日本の「コメ」と「自動車」と「安倍元総理との思い出」の3つに、自分の言葉で触れたことは大きなヒントです。
結果を出したいトランプ政権
今、トランプ政権は、日本以上に、関税交渉で結果を出したいと思っていることでしょう。だからこそ、トップバッターに、組みしやすい日本を選んだのです。日本との交渉成果を見せて、各国との交渉につなげたいわけで、日本とさえ話がまとまらなければ、この政策は完全に行き詰まってしまいます。そこに日本にとってのチャンスもあるはずです。
これまで数々の難しい通商交渉を乗り越えて来た日本が、世界に恥ずかしくない形で、関税引き下げを勝ち取れるか、世界が固唾をのんで見つめています。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)