伝説の投資家ジュリアン・ロバートソン氏に師事したファンドマネジャー数十人のうちの1人が、トランプ政権で制裁戦略の顔となる。

ジョン・ハーレー氏は10日の上院承認公聴会を経て、財務省のテロ・金融情報(TFI)部門率いる予定だ。このポストは職員約1000人を監督し、テロリストの資金調達やマネーロンダリング(資金洗浄)、麻薬カルテルなど多岐にわたる問題に対処する重要な役職だ。

ジョン・ハーレー氏(10日)

米政府が特定の対象への制裁を強化してきたここ10年ほどで、TFI部門は注目を集めるようになっている。特に商品トレーダーにとって、同部門は重要だ。米国がロシアやイラン、ベネズエラなどの主要産油国に対する規制を緩和する兆しがあれば、相場が大きく変動する可能性があるためだ。

ハーレー氏は公聴会で、イランに最大限の圧力をかけるトランプ政権の戦略が「大きな成功」を収めたと主張。あらゆる制約を適切に実施するために、同盟国や国際的な銀行と連携する重要性を強調し、米国の重要な技術を悪用している可能性のある中国企業に照準を絞ると表明した。

アジアでの経験

プリンストン大学を優秀な成績で卒業したハーレー氏は、湾岸戦争に従軍。戦場の通信システムを監督し、後に表彰された。スタンフォード大学の経営学修士(MBA)取得後、金融業界に入り、フィデリティ・インベストメンツやボウマン・キャピタル・マネジメントで働いた。

同氏は2002年、キャバルリー・アセット・マネジメントを設立。マイクロソフトやアルファベット、アップル、エヌビディアなどを含む「マグニフィセント7」と呼ばれようになったテクノロジー株の多くに早期から投資し、その名を知られるようになった。

ハーレー氏と共にボウマンとキャバルリーで働いていた元投資家のマイケル・ティアニー氏によると、22年に90歳で死去したロバートソン氏の他のまな弟子同様、ハーレー氏は現在主流のマルチ戦略よりも、集中型の長期投資を好んでいたという。

財務省の報道官は、サプライチェーンの専門家で、市場実務や戦闘経験、学術分野で輝かしい実績を残したハーレー氏はこの役職にふさわしいと説明。同氏はコメント要請に回答しなかった。

就任が認められば、ハーレー氏は潜在的に利益相反を引き起こす可能性のある保有資産を処分しなければならない。一般的には承認から90日以内に処分しなければならないが、複雑な資産構成の場合はそれ以上の期間が認められる。

これまでのTFI部門トップと異なり、ハーレー氏は正式な法律の教育を受けておらず、また、不正資金対策専門家らの結び付きの強いコミュニティー出身でもない。

しかし、キャバルリーは台北と香港に拠点を構え、アジアでの経験を積んできた。多くのトランプ政権高官が米国にとって長期的に最大の脅威と見なしている中国を知った上で、国家安全保障問題を捉えるのに寄与する可能性がある。

最近の米歴代政権が抱えてきた主要な課題の一つは、ドルの基軸通貨としての地位を維持しながら、経済制裁を行う適切なバランス調整だ。

中国人民元はドルに代わり得る通貨の一つと考えられており、ワシントンを本拠とする新アメリカ安全保障センターの分析によると、中国は昨年、米国の金融制裁が科せられた国の中で2番目に大きな標的となった。また、どの国よりも多くの企業を対象とした輸出規制に直面したという。

原題:Hedge Fund Veteran Set to Lead Trump’s Sanctions Strategy (1)(抜粋)

--取材協力:Bill Allison.

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