(ブルームバーグ):米国の貿易相手国・地域を広く対象とする上乗せ関税が米時間9日午前0時すぎに発動されると、トランプ大統領は債券市場を注視した。
米長期金利は急騰し、10年国債利回りは3営業日としては2001年以来の大幅上昇を記録。最悪のシナリオにトランプ氏は直面していた。インフレを嫌気して同氏のホワイトハウス返り咲きを実現させた有権者らは、今や物価と借り入れコスト両方の上昇という二重苦に見舞われた。
「人々は少し不安な気持ちになっていた」とトランプ氏は認めた。

トランプ大統領は関税プログラムを全面的に推進すべきかどうか、数日にわたり検討を重ねていた。ホワイトハウス・ローズガーデンでの2日の発表直前まで、経済担当補佐官らと内容について詰めの協議を行った。
そのトランプ氏が、9日の包括的上乗せ関税発動から14時間以内というタイミングで、歴代大統領では最大級の経済政策転換を公表することになる。中国を除く貿易相手国・地域への上乗せ関税を90日間停止する今回の決定は、2日の発表後に急落していた株価を回復させた。一方で中国への関税率は125%に引き上げた。
ホワイトハウス当局者らは大統領の決定について、入念に調整した政策を巧みに実行したと表現した。上乗せ関税の回避を目指し、米政権に最近接触してきた同盟国や貿易相手国から提案を引き出したと説明した。
しかしトランプ氏は9日午後、上乗せ関税一時停止の決定が金融市場の混乱に大きく左右されたことを認めた。「人々は少し神経質になって、ちょっと怖がっていた」などと語った。
同氏の長年の協力者であるリンゼー・グラム上院議員は8日夜の段階で、関税の影響を巡る懸念を大統領に電話で伝えている。
グラム氏は「あなたは4年間話してきた公正な競争条件を実現しようとしており、それを実行する手段が存在する。あなたがやったことに人々は反応している。彼らと話し合い、どんな取引が可能か確かめてみようではないか」と促したという。
9日朝になると、企業の幹部やトレーダーらが警鐘を鳴らした。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はFOXビジネスの番組で、「貿易が不公平だったという意見は完全に理にかなっている」とした上で、トランプ政権の関税政策はリセッション(景気後退)を招く可能性が高いとも指摘。「市場は必ずしも正しいとは限らないが、時として正しいことがある」と述べた。
昨年の大統領選に向け、トランプ氏の選挙運動を支援したヘッジファンド運営会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントのビル・アックマンCEOも最近数日、貿易相手国・地域とのディール(取引)に道を開くため、上乗せ関税を90日間停止するアイデアを提案していた。
ラトニック商務長官は貿易相手国から「正しい類いの提案」が相次いだことも影響したと指摘する。「電話の量が本当に信じられないほどだった」という。
最終的にトランプ氏の心は動き、上乗せ関税は一時停止に至った。

原題:Bond Chaos, Deal Mania and Dimon: Inside Trump’s Tariff Reversal(抜粋)
(アックマン氏の提案や商務長官の発言などを追加して更新します)
--取材協力:Steven T. Dennis、Skylar Woodhouse.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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