(ブルームバーグ):台湾の電子機器製造大手、鴻海精密工業で電気自動車(EV)事業の最高戦略責任者を務める関潤氏は、日本の自動車メーカーからの受託生産を視野に、将来的に日本で工場を取得するか建設して現地生産することを検討していることを明らかにした。
関氏は8日の都内での英語インタビューで、世界的に生産能力が余剰となる中、欧州の自動車メーカーからは鴻海による工場取得に関して打診を受けていると明かした。米国の関税による影響もあり日本においても余剰能力が生まれると見込んでおり、取得に向け一部の企業と協議を行っていると述べた。
関氏は、鴻海が日本企業で余剰になった工場を取得できる「可能性があるかどうかを確認しているところだ」と述べ、協議は初期段階であることを示唆した。また、新規に工場を建設することも選択肢との考えを示した。
「iPhone」など米アップル製品などの受託生産で成長してきた鴻海が、高い世界シェアを持つ日系自動車メーカーともEVで実績を作れれば、今後の成長に向けて弾みがつく。ただ日系メーカーと取引を始めるハードルは一般的に高く、EV分野での新興勢力の台頭への警戒感も強いことから鴻海の思惑通りに話が進むかは不透明だ。
鴻海は販売低迷などで苦境に陥る日産自動車と提携を模索するなど日本企業との協業に意欲を示してきた。3月には三菱自動車が鴻海にEVの生産を委託する方針だと一部メディアで報じられていた。関氏は個別の企業については言及を控えた上で、今後1年の間に複数の日本企業とEV分野での提携を見込んでいると述べた。
日本市場にEV投入へ
関氏は9日に都内で開いた説明会で、日本市場で鴻海が開発したEVの乗用車とバスなど複数車種を27年までに投入する考えを示した。また、クロスオーバースポーツ用多目的車「モデルB」を来年、日本の自動車メーカー向けにオセアニア市場で投入する計画であることも明らかにした。
日産で幹部を務めていた経験のある関氏は、「自動車メーカーは外部の人間に対して非常に懐疑的だ」とした上で、「一度われわれのモデルを使ってもらえればわれわれの技術レベルが彼らと同等か、あるいはそれ以上であることが理解してもらえるだろう」と述べた。
関氏は日産で副最高執行責任者(COO)を務めた後、日本電産(現ニデック)に移籍。社長兼最高経営責任者(CEO)まで昇格したものの、22年9月に退社し、その後鴻海に転じていた。
鴻海の劉揚偉会長は2月、日産との提携に必要であれば日産の最大株主である仏ルノーから同社株を買い取ることを検討し得ると語っていた。また、日本経済新聞は同月に鴻海がホンダに協業を提案したと報じ、日産や三菱自を含めた4社での協業を視野に入れているとした。
(説明会での発言を追加して更新します)
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