(ブルームバーグ):石破茂首相は7日午前、米国による一連の関税措置について日本としての対応方針をパッケージにまとめ、トランプ大統領との直接交渉に臨む考えを示した。電話会談や早期の訪米などを通じて、税率引き下げを強く求める構えだ。参院決算委員会で答弁した。
石破首相は、米国の措置は極めて不本意で遺憾だとして、関税引き下げを「強く言っていかなければならない」と説明した。既に調整中の電話会談に関しては「早ければ早い方がいい」とする一方、自らの訪米については最もふさわしいタイミングで行い、日本の対応を「パッケージ」として示して「1回で話をつけなければいけない」と述べた。
検討分野としては農産物、エネルギー、造船、自動車などを挙げ、「多岐にわたる」と指摘。具体的には、米国産のエタノールやアラスカの液化天然ガス(LNG)にも言及した。
日本の非関税障壁については精査中として、見直す場合は社会的な安全の確保を前提に「米国に応えられるものがあるのだろうか」検討するとした。米国の雇用創出と日本の国益の両立が必要とした上で、公正、フェアが「日本国のあるべき姿だ」との考えも明らかにした。
トランプ関税への対応は、内閣支持率が低迷する石破政権にとって最大の政策課題に浮上している。首相は先週、与野党党首会談を開き、各党に協力を要請。参院決算委では「この国難に何としても打ち勝たねばならない」とし、「国家一体となって臨みたい」と野党議員に改めて協力を呼び掛けた。当面、対米交渉と中小企業支援など国内対策を並行して進めることになる。
石破首相は7日昼に開かれた政府与党連絡会議では、トランプ大統領が目指す米国の雇用創出に対し「日本でも協力できることはあり、そのためにも関税は撤廃、引き下げを強く求めたい」と語った。公明党の斉藤鉄夫代表は国内対策に関し、「この国難を乗り越えるために、できることは全てやるとの政府の決意が伝わることが重要だ」と十分な対応を求めた。
FNNによると、石破首相は7日夜にもトランプ大統領と電話会談する方向で調整しており、今後の協議の進め方を確認することになるとみられるという。
他の国会での首相発言
- コメに700%の関税かかっていない-事実誤認がある
- 誤りを正しておかないとこれから先の議論にならない
- 最後は大統領でないと判断できない-米関税政策
- あらゆる選択肢は当然考えている-米関税措置への対応
- 日本は米国に投資し雇用も創出、他国と同一に取り扱うことは認められない
報復関税には否定的
これに先立ち、石破首相は5日、読売テレビの番組で、米国に報復関税を課すか問われ、「売り言葉に買い言葉みたいなことをやるつもりはない」と否定的な姿勢を明らかにした。米側の指摘に対する日本の対応に関して「小出しにするようなことはだめだと思う。一つのセットにする、パッケージにするということで 持っていかないと心を打たない」とも述べていた。
米国の関税措置を受け、政府は全国約1000カ所に特別相談窓口を設置。中小・小規模事業者向けの資金繰り支援などの国内対策を実施している。与野党からは追加の経済対策を求める声が出ており、共同通信は7日、補正予算案の編成を検討していることが分かったと報じた。
トランプ政権は3日の自動車関税25%に続き、米国への全輸出国に基本税率10%の関税を課す「相互関税」を5日に発動。日本を含む約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率についても、9日午前0時1分(同日午後1時1分)に適用し、日本の税率は24%となる。自動車と自動車部品は相互関税の対象からは除外される。
市場動揺
トランプ大統領の関税政策による「貿易戦争」への不安から、7日の日本市場では日経平均株価が史上3番目の値下がり幅を記録し、2023年10月以来の安値となった。主要な株価指数先物は、取引が一時停止されるサーキット・ブレーカーが発動された。
林芳正官房長官は午前の記者会見で、株価の動向については直接コメントを避けたが、関係省庁と連携し、「内外の経済・金融市場の動向について緊張感を持って注視するとともに、経済財政運営に万全を期したい」と語った。また、石破首相から加藤勝信金融相らに6日、市場や投資家の動向を関係閣僚らと連携し、注視し、適切に対応するよう指示があったとも説明した。
加藤金融相は7日、「足元の金融市場は世界的にも不安定な動きがみられる」とした上で、投資家に冷静な判断を要請。金融政策については、「基本的にこれまで同様、日本銀行において対応される」と述べるにとどめた。国会内で記者団に語った。
JNNが4月5,6両日に行った世論調査で、石破内閣の支持率は前月から7.8ポイント下落し、30.6%と昨年10月の就任後で最低となった。米国の相互関税に対しては、57%の人が「対抗措置をとるべきだ」と回答した。
(石破首相の発言を追加し、更新しました)
--取材協力:横山恵利香、清原真里.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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