食料インフレ
花見コスト指数の構成品目の14品目の価格変化を個別に調べると、①まんじゅう、②だいふく類、③炭酸飲料の上昇が目立つ。

この3つに共通するのは砂糖を材料に使っていることだ。まんじゅう、だいふく類は、材料に小麦も使っている。砂糖の自給率は15%、小麦は13%と低い。自給率が低いと、円安や海外市況の高騰の影響を受けて材料価格が上がりやすい。
おにぎりは最近のコメ高騰の影響が出ているのだろう。ポテトチップス、からあげは油の高騰が響いている。 逆に、値下がりはビールと茶飲料である。ビールは2023年10月に酒税法改正で350ミリリットル当たりにかかる税率が70円から63.35円に下がった効果がある。飲料はいずれも価格上昇が小幅だが、炭酸飲料のように砂糖が多く入っていると高騰する。茶飲料は、ペットボトルのお茶なので、容器のプラスチック素材の高騰も影響している。
ここ数年、食料品全体が高騰しているのは、同様に自給率が低く、その裏返しとして輸入物価の高騰の影響を受けやすいからだ。花見コストに限らず、最近の食料品の価格高騰は、物価上昇を牽引している格好だ。
お花見の予算
人々はお花見にどのくらいの費用をかけているのだろうか。ウェザーニュースが毎年調べている調査(お花見調査)では、2025年は1人2,997円になるそうだ。仮に、2019年から2025年にかけて花見コストが1.214倍になっているとするならば、2019年の2,469円だった費用が、+567円ほどコスト増になっている計算になる。お花見の参加者が同じ内容の食事をしようとしても、コロナ前より▲ 567 円分の内容を切り詰めなくてはいけないことになっている。
このウェザーニュースの2019年のお花見費用は2,728円である。これが1.214倍になったと仮定すると、3,312円になる計算だ。それが実際には2,997円なのだから、食べ物・飲み物の内容は逆算して、▲9.5%ほど圧縮されていることになる。つまり、お花見に持っている質や量を約▲1割ほど節約しているということがわかる。
食料品の値上がり
帝国データバンクの調査では、主要な食品メーカーは2025年4月に飲食料品を4,225品目ほど値上げする方針だという。酒類・飲料、菓子がそれぞれ20%、19%の値上げ率になるとされる。そうなると、2月までのデータで計算した花見コスト指数は、3・4月の実績データで計算し直すと、1.214倍よりも高くなっている可能性がある。食料品の高騰は、2025年春以降もさらに継続しそうである。
では、いつくらいに食料品の高騰は落ち着くのだろうか。輸入物価の高騰が原因であれば、円安が一服することが前提条件になるだろう。ドル円レートが対前年比で円安になれば、それは輸入物価の上昇につながる。おそらく、2025年4~6月は対前年比の円安が落ち着いてくるので、食料品インフレは夏場にはやや鎮静化してきてもおかしくはない。ただし、コメ価格高騰は政府の備蓄米放出でもなかなか下がっていかない。この要因だけで、消費者物価指数は+0.30%ポイントも押し上げられている(2025年2月)。コメの高騰が治まらないと、食料品の割高感はしばらく続くとみられる。
(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野英生)