(ブルームバーグ):トランプ米大統領が証券取引委員会(SEC)委員長に指名したポール・アトキンス氏は、早くも政治的な試練に直面した。ウォール街やデジタル資産企業との強いつながりを巡り、厳しい目を向けられている。
アトキンス氏は共和党系の元SEC委員でコンサルティング会社パトマック・グローバル・パートナーズ創業者。27日に米上院銀行委員会で開かれた同氏の指名承認公聴会では、民主党議員から激しい反対意見に見舞われた。

同委の民主党筆頭理事ウォーレン議員は公聴会に先立ち、アトキンス氏が米国の家庭よりも、「過去と未来の顧客のことを考えている」と指摘した。ただ、こうした批判が、共和党が多数派を占める上院での承認を妨げる可能性は低い。
アトキンス氏の支持者らは、バイデン前政権の政策を巻き戻し、資本形成を強化し、暗号資産産業に明確性をもたらす理想的な人物だと見る。
同氏は議員らに対し、ウォール街とデジタル資産企業のための「明確なルール」作りに取り組む方針を示した。
「不明瞭で過度に政治的かつ複雑で負担の大きい規制が、資本形成を阻害している。一方で、米国の投資家は、投資の真のリスクを理解する手助けとは正反対の大量の開示情報に見舞われている」と述べ、「優先順位をリセットし、SECに常識を取り戻すべき時だ」と指摘した。
指名が承認されればアトキンス氏(66)は、ここ数十年で最も裕福なSEC委員長となる。政府倫理局への届け出によると、アトキンス氏と、屋根葺き製品会社の相続人である妻サラ氏の純資産は少なくとも3億2700万ドル(約493億円)。
27日にウォーレン氏に送った書簡でアトキンス氏は、過去のSEC委員長候補に適用されたのと同じ倫理基準を「満たしているか、それを上回っている」と述べた。
25日に公開された書類によると、パトマック社におけるアトキンス氏の持ち分は少なくとも2500万ドルの価値がある。同氏は承認後90日以内に最高経営責任者(CEO)を辞任し、同社およびその他の保有株を売却すると述べた。
パトマック社の長い顧客リストは、アトキンス氏の利益相反を回避する力に疑問を投げかけている。同氏の提出書類によると、バンク・オブ・アメリカ(BofA)やバークレイズ、エクソンモービルのほか、世界的な投資会社のテマセク・ホールディングス、金融サービス会社バーチュ・ファイナンシャルなどから報酬を受け取っていることが示されている。
ウォーレン議員はアトキンス氏に対し、同氏の会社における持ち株を誰が購入するのか詳細を明らかにするよう迫っている。また、2002年から08年までSEC委員を務めたアトキンス氏が金融危機前の市場リスクを軽視したと非難している。
これに対しアトキンス氏は、危機は多面的なものではあったが、その根底には政府の圧力を受けてファニーメイとフレディマックが行ったサブプライム住宅ローンがあったと反論した。
原題:Trump Pick for SEC Faces Sharp Conflict-of-Interest Scrutiny (3)(抜粋)
--取材協力:Katanga Johnson.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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