●エコノミストのコンセンサス予想では、1-3月期の成長率見通しが大幅下方修正
●供給側統計から想定される1-3月期の成長率は前期比年率▲2.2%の大幅マイナス成長
●日銀が5月利上げに動く可能性はかなり低い

エコノミストのコンセンサス予想では、1-3月期の成長率見通しが大幅下方修正

米価格の上昇などを受けた実質賃金の目減りに加え、足元では株価も下落しており、1-3月期の個人消費は低迷しそうである。

総務省が3月11日に公表した家計調査によると、1月の実質消費支出は前月比▲4.5%と大幅に減少した。24年10-12月期の平均水準に対する1月分の水準は▲3.4%であり、個人消費は前期比で減少する可能性がある。
むろん、2人以上世帯の統計である家計調査の結果に、単身世帯の統計である家計消費単身モニター調査などを加えた上で、GDP統計の家計最終消費支出に近くなるように推計した総消費動向指数(CTIマクロ)は小幅なマイナス(前月比▲0.1%)にとどまっていることから、大幅なマイナス成長にはならない見込みだが、厳しい結果になりそうなことに変わりはない。

3月18日に公表されたESP調査によると、25年1-3月期の実質GDP成長率の予想平均は前期比年率+0.16%となった。前回2月調査では同+1.11%だったことから、大幅に下方修正された格好である。

当該調査は3月5~12日に行われたことを考慮すると、前述した弱い家計調査の結果を反映していない回答者も多かった可能性があり、次回の調査ではさらに下方修正される可能性がある。
日経センターによると今回のESP調査では「民間消費と輸出が下方修正されたほか、輸入が上方修正された」という。

また、供給サイドの統計では、1月の鉱工業生産や第3次産業活動指数も弱めの結果だった。
1月の鉱工業生産は前月比▲1.1%、1月の第3次産業活動指数は同▲0.3%となり、24年10-12月の平均水準からはそれぞれ▲2.0%、▲0.2%である。
供給サイドの統計からも、25年1-3月期にマイナス成長となる可能性が高くなっていることが分かる。

供給側統計から想定される1-3月期の成長率は前期比年率▲2.2%の大幅マイナス成長

鉱工業生産指数と第3次産業活動指数をGDP全体に占める割合で組み合わせると、供給側統計から想定されるGDPの変化を簡易的に求めることができる(以前は建設業活動指数も組み合わせて全産業活動指数として経産省から公表されていた)。

旧全産業活動指数のウェイトである第3次産業77.04%、製造業22.96%を用いて計算すると、供給側統計から25年1月の実質GDPは24年10-12月期対比で▲0.5%となる。
仮に、25年1-3月期全体の前期比も同じ数字になった場合、前期比年率では▲2.2%の大幅マイナス成長となる。

国内経済の雲行きはかなり怪しくなってきたと言える。

日銀が5月利上げに動く可能性はかなり低い

マイナス成長になりそうな25年1-3月期のGDP統計の公表は、5月16日に予定されている。
4月30日-5月1日に予定されている日銀金融政策決定会合では、GDP統計の結果がかなり予想できる状況になっているだろう。
約2週間後に弱いGDPが公表される公算が高い状態で日銀が利上げを実施することができるかという問題がある。
むろん、金融政策は短期的な経済指標の変動に縛られるべきではないが、6月22日に投開票が行われる予定の東京都議選、7月22日投開票が有力とみられる参院選を前に、日銀が市場を混乱させるリスクを取る可能性は低いのではないかと、筆者は予想している。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)