半導体材料事業を手掛けるJX金属が19日、東京証券取引所プライム市場に上場した。買い気配で始まり、初値は843円と公開価格の820円を2.8%上回った。2018年以来の大型の新規株式公開(IPO)で、株価動向が後続企業群への追い風になるか注目が集まる。

初値をベースとした時価総額は7830億円。その後、株価は上げ幅を拡大し、一時公開価格比7.7%高の883円を付けた。終値は同6.6%高の874円となり、時価総額は8115億円で初日の取引を終えた。

売り出し総額は4390億円で昨年の東京地下鉄(東京メトロ)を上回り、ソフトバンク以来となる約6年ぶりの大型IPOとなった。事情に詳しい関係者によると、売り出し株数に対する投資家需要は3倍強となり、海外投資家からは約5倍の需要があった。

上場セレモニーに出席したJX金属の村山会長(左)と林社長(19日・東京証券取引所)

SMBC信託銀行の山口真弘チーフマーケットアナリストは「最近の半導体セクターの流れからすると思ったより強い値動きという印象だ」と話す。半導体関連株の調整が続く流れの中でも、「投資家心理がまだ極端に悪くなっていないことを示しているだろう」と述べた。

日経平均株価はJX金属がIPOを発表した2月14日から仮条件決定までに5%下落。仮条件はIPO発表時に示された想定価格の862円から810-820円に切り下がった。半導体関連事業を展開する同社に対する投資家のリスク許容度も試された格好だ。

 

同社は半導体の製造工程で使用されるスパッタリングターゲットと呼ばれる材料で世界シェアの6割超を持つ。半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)や米インテルなどを顧客に持ち、米ハネウェル・インターナショナルや中国のコンフォン・マテリアルズ・インターナショナル(寧波江豊電子材料)などが競合に当たる。

同日、東証で会見したJX金属の林陽一社長は、今後の企業の合併・買収(M&A)戦略について、大型買収は当面考えていないとした上で自社の周辺技術を持つ企業など小規模買収はあり得るとの考えを示した。

ENEOSホールディングスがJX金属の株式100%を保有していたが、50.1%を売り出した。ジョイント・グローバル・コーディネーターは、大和証券、JPモルガン証券、モルガン・スタンレー、みずほ証券が務めた。

(株価終値や記者会見での社長コメントを追加して記事を更新します)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.