海外投資家が日本株から手を引いている。為替の円高が警戒される上、中国など投資魅力を高める他市場と比べて説得力ある買い材料が乏しいためだ。

日本取引所グループのデータによると、海外投資家は昨年7月以降、日本株の現物と先物を合わせて約8兆7800億円売り越した。コーポレートガバナンス(企業統治)改革への期待が本格化した2023年以降の買いは既に帳消しになっている。

海外投資家は日本株売買代金の3分の2以上を占める。24年7月の最高値更新後、足踏みが続く日本株が復調に向かうのに、海外勢の回帰は欠かせない。

ゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株ストラテジスト、ブルース・カーク氏は、「日本株はやや難しく、不安定な市場だと受け止められている」と話す。昨年8月の相場急落や昨秋の自民党総裁戦後のボラティリティーの高まりが海外投資家の売りのきっかけになったとみている。

年初来で日経平均株価は5.1%安と、MSCIアジア太平洋指数の4.5%高をアンダーパフォームしている。DeepSeek(ディープシーク)など人工知能(AI)技術の進展や景気回復への期待で中国株が堅調に推移しており、日本から資金がシフトしているとの見方もある。

ピクテ・アセット・マネジメントのマルチ・アセット・ロンドンの共同責任者、シャニエル・ラムジー氏は、今年に入って日本株のエクスポージャーを減らし、中国や欧州、新興国市場に投資機会を見いだそうとしている一人だ。

日本銀行の追加利上げや米国の景気悪化懸念で円高が進むリスクから、日本株には短期的に注意が必要だとラムジー氏は話す。日本株のファンダメンタルズは悪くないものの、AIをテーマに盛り上がりを見せる中国市場などと比べると見劣りすると言う。

日本株強気派にとって心強い知らせは、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による5大商社株の買い増しだろう。23年4月に5社の保有率引き上げが明らかになった後、海外勢は9週連続で日本株を買い越した。今回も日本に海外投資家を呼び戻す契機になり得る。

ゴールドマンのカーク氏は、日本企業の決算発表や株主総会シーズンが近づくにつれ、コーポレートガバナンスに関連した好材料が出やすくなると予想。日本株の先行きは明るいとみている。

一方、サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、「2年間の上昇局面を経て、日本株は投資先を厳選することが必要になっている」と話す。米国の成長鈍化や日銀の利上げで今年は円高が進む可能性が高く、輸出関連銘柄の比重が大きい日本株の魅力は海外投資家にとって低下していると述べた。

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