(ブルームバーグ):香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントは14日、DICによる美術館の縮小・移転計画を非難する声明を発表した。経済価値が高いマーク・ロスコの「シーグラム壁画」7点を中核とする新たな美術館構想に対し、「上場企業の資産1000億円以上を用いて行うべきことではない」との見解を示した。
DICは12日、大株主のオアシスが運営に疑問を投げかけていたDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)のコレクションの一部を東京・六本木の国際文化会館に移設し、2030年以降に同所で美術館を開業すると発表した。
同社は約400点の美術作品を保有しており、戦後アメリカ美術を中心とする20世紀作品を中核として残す一方、現有コレクションの4分の3を段階的に売却する。
DICのコレクションは専門家の間でも評価が高く、昨年公表した主要作品リスト57点だけで少なく見積もっても10億ドル(約1480億円)の価値があるとされる。全保有作品の24年6月時点の資産価値は簿価ベースで112億円。
池田尚志社長は12日の会見で、ロスコのほかジャクソン・ポロック、フランク・ステラ、「睡蓮」で知られるクロード・モネの作品などを残す意向を示した。貴重な作品ほど人気も高く、ロスコやポロックの作品は1点数十億円以上と評価される可能性がある。
オアシスは発表文で、DICの時価総額(約3000億円)を踏まえると「一連の戦後アメリカ美術は時価総額の3分の1以上を占めており、資本の使い方として極めて不適切」と指摘。国際文化会館はDIC創業家出身の川村喜久取締役と極めて密接な関係にあるとし、今回の新美術館構想は株主から財産を取り上げ、その支配権を川村氏らの影響下に置こうとする行為だとの懸念を示した。
川村氏と国際文化会館の関係に対するオアシスの見解について、DIC広報担当者はコメントを控えた。
東京証券取引所などが促すコーポレートガバナンス(企業統治)改革を背景に上場企業に対する経営効率化への圧力が強まっている。今回のケースは株主を含めたステークホルダーが納得できる理由がなければ、高価な美術品など本業に直接関係ない資産を持ち続けるのは難しくなってきた現状を浮き彫りにした。
オアシスは今月27日に開催予定のDIC定時株主総会で、株主に対し業績不振の責任を問うとして猪野薫会長、美術館移転計画を主導したとして池田社長のそれぞれの取締役再任に反対するよう要請している。
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