(ブルームバーグ):米銀JPモルガン・チェースのクオンツ部門は、デリバティブ(金融派生商品)を活用した投資戦略を構築し、あらゆるタイプの投資家に対してヘッジファンドのような投資を低コストで提供している。
同行の戦略指数事業は、定量的投資戦略(QIS)と呼ばれるブームの最前線に立ってきた。QISは、人気のシステマティック取引をスワップや仕組み債に転換するもので、基盤となる戦略より簡単でコスト効率のよいヘッジファンド類似商品を生み出している。
QISはトレンドフォローやオプション売りなど、伝統的なヘッジファンドの典型的なエクスポージャーを低コストで提供できることから、保険会社や年金基金の間で人気だ。
最近では、かつては競合商品に対して敵対的だったヘッジファンドでさえ、これらの戦略に投資。JPモルガンの部門では、こうした取引に関連する想定エクスポージャーが過去4年で年平均15%拡大し、1000億ドル(約14兆8000億円)に達した。
同行によると、天然ガスなどのコモディティーや新興国通貨、翌日物金利のオプションなどを含む資産全体にわたって、クオンツ商品の提供を拡大している。住宅ローン担保証券に関連する取引も次のターゲットとして視野に入っているという。

JPモルガンのグローバル戦略指数共同責任者アルノー・ジョベール氏は「新たな市場機会を常に探し求め、アクセスが比較的困難な市場にもより多くの顧客が参入できるよう支援していきたいと考えている」と述べた。
JPモルガンの1000億ドルは、実際の投資額ではなく想定エクスポージャーだ。多くの場合スワップの形を取るためだ。
ブルームバーグ・ニュースが入手したアルボーン・パートナーズの調査によると、証券会社13社のQIS部門の運用規模は昨年6月時点で過去最高の5730億ドルと推計されている。
スワップはコスト効率がよく取引が容易であるものの、人間の運用者のように市場の変化に対応できないとの批判もある。また、資産運用会社とは異なり、QISを販売する銀行には購入者に対する受託者責任はない。

JPモルガンのQIS事業の顧客の約70%は年金基金や保険会社などの機関投資家で、ヘッジファンドが1桁台後半の割合を占めている。
ジョベール氏は、QISは「ヘッジファンドにとって脅威と見られていたが、今では誰もが利益を得られる状況になっていると思う」と語った。
原題:JPMorgan Quant-Cloning Factory Churns Out $100 Billion of Trades(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.