米国で住宅を購入するには難しい時期だ。そして、住宅市場の方向性を予測するのも、ほぼ同様に困難だ。

全米の多くの地域で住宅価格は上昇を続けており、住宅ローン金利も6.5%を上回ったままで、今春は多くの買い手の購入能力が懸念材料となるだろう。しかし、大きな不確定要素もある。それは新大統領だ。

トランプ大統領のメキシコ、カナダ、中国との関税戦争は、インフレを再燃させて金利を上昇させる可能性がある。あるいは、逆にリセッション(景気後退)に陥れば金利は低下するだろう。

天気が暖かくなり、新学期が始まる前に物件を購入しようとする家族が増える住宅販売の需要期に、これらの要因が購入者にどのような影響を与えるのかが明らかになりつつある。しかし、消費者信頼感の低下や株価の下落、住宅購入契約の減少や契約キャンセルの急増など、初期の兆候は特に明るいものではない。

キャピタル・エコノミクスの北米エコノミスト、トーマス・ライアン氏は「一時的なトランプ効果の後に、再び暗いムードが戻ってきているようだ」と述べ、「住宅価格が下落するとは思わないが、市場はかなり冷え込むと予想している」と続けた。

中古住宅販売成約指数

ここ数週間で住宅ローン金利は低下したものの、借り入れコストは依然として2022年初めの約2倍だ。ここ数年は多くの住宅所有者が引っ越しをためらい、低金利の住宅ローンを手放すリスクを避けているため、売りに出ている住宅の数が限られている。

良いニュースは根強い在庫不足が緩和され始め、購入者に選択肢が増えていることだ。その主な理由は、物件が市場に出回っている期間が延びたことだ。レッドフィンのデータによると、2月に購入者が決まった物件は契約締結までに平均54日間、売却リストに掲載されていた。これは過去5年で最長だった前月からわずか2日の減少にとどまる。

ファースト・アメリカン・ファイナンシャル・コーポレーションの次席エコノミスト、オデタ・クシ氏は、活況でなくても、少なくとも昨年春の悲惨なほど低い水準から販売が改善する余地はあると述べた。

物件を手放す住宅所有者は、その売却益を次の購入に充てることができ、住宅ローン金利上昇による痛手を和らげることが可能だと、同氏は指摘。初めて購入する人の方がより困難になるだろうと述べた。しかし、収入は増加しており、特に価格が軟化し、建設業者が小さく低価格の住宅を供給しているサンベルト地帯の市場では、値ごろ感に改善の兆しが見られると語った。

金利が高くとも、水準が維持されれば、購入を前向きに検討する人が増える可能性もある。

30年物固定住宅ローン金利

クシ氏は「金利が安定し、販売向け在庫が緩和され続ければ、購入は徐々に回復するだろう」と述べた。「在庫が滞留するにつれ、値下げが行われるかもしれない。値下げは、様子見に回っていた購入者を呼び込むことになる」と話した。

もちろん、立地も重要だ。北東部や中西部では、価格が高騰し、販売が低迷している。購入できる物件がほとんどないためだ。しかし、フロリダ州やテキサス州などの市場では、住宅建設業者が特に活発に活動している一方、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による移住ラッシュが過去のものとなったことで需要が減少している。

フロリダ州南部では売れ残りのコンドミニアムがあふれかえっていると、ポンパノビーチを拠点とする不動産ブローカーのアレクサンドラ・デュポン氏は言う。カナダ出身のデュポン氏は、カナダ人の売り手の多くがトランプ大統領に対して怒っており、為替レートとフロリダ州の法外な不動産保険料に不満を抱いていると述べた。

同氏は「今シーズンに本気で売却したいのであれば、適正な価格を設定しなければならないと顧客に伝えている」と語った。「ある顧客は毎週、現状や最新情報を聞いてくるが、何も売れていないので、返答に困る」と続けた。

一方、ボストン周辺では状況は正反対で、今春も激しい競争になりそうだ。

マサチューセッツ州ニュートン在住の不動産業者、エリザベス・ベイン氏は入札合戦が毎週末、起こっていると指摘。ある購入者は、いてつくような寒さのニューイングランド地方の真冬に、12件の応札があったウォルサムの物件を逃した。シアトルから転居してきた別の購入者は、3件の物件を逃した後、4度目の挑戦でようやく購入にこぎつけた。

ベイン氏は「3ー4月に入って物件の登録件数が目に見えて増加することを願っている。しかし、そうは言っても、この需要を満たすことはできないだろう」と述べた。

原題:US Housing Market Is Cooling Right as a Key Season Kicks Off (1)(抜粋)

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