12日の日本市場では、円が1ドル=148円台前半に下落。トランプ政権による鉄鋼・アルミニウム関税の発動で米国の物価高につながるとの見方が広がり、ドル買いがやや強まった。債券は下落し、株式は反発。

オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、前日のニューヨーク市場終盤の流れや持ち高調整から公示仲値の設定にかけドル買い・円売りが入ったと指摘。日本時間夜には2月の米消費者物価指数(CPI)が発表予定で、「予想より強めなら米金利高・ドル高の方向に振れやすい」と見ていた。

トランプ政権は日本時間午後、鉄鋼・アルミ輸入関税を例外なく、予定通り発動した。

一方、春闘の賃上げ集中回答が日本銀行の追加利上げ観測を強める内容になれば、円を支えるとの見方もあった。日銀の植田和男総裁は12日の衆院財務金融委員会で答弁し、長期金利の上昇は経済・物価見通しや海外金利動向を反映しているとの市場の見方と「大きな齟齬(そご)はない」と発言。債券市場では長期金利上昇を容認する内容と受け止められ、一時売り圧力が強まった。

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=148円台前半に下落。トランプ米政権の鉄鋼・アルミへの関税発動をきっかけに米景気に対する懸念が和らいだほか、ウクライナ情勢の改善期待を背景にリスク選好の円売りがやや優勢だった。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、「ドル・円はなかなか下がらないので、ショートカバー(買い戻し)が入っている」と指摘。一方で、円ロングポジションが過去最大に積み上がっており、リスク回避的な環境でも円を買いづらくなっているとも話した。

債券

債券相場は下落。ドイツや米国の長期金利が上昇したほか、日銀による追加利上げへの警戒感から売りが優勢だった。20年国債入札の結果は無難となり、20年債利回りは低下に転じた。

りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、来週の日銀金融政策決定会合で政策変更はないとみるが、「次の5月会合での利上げの可能性を示すコミュニケーションがあるのではないかとの警戒感が相場の重しになっている」と言う。

20年入札については、調整が続いて買いやすかったほか、「年度末を控える中で水準的に最低限の手当てをしておこうとする需要があった」と分析した。入札結果は、最低落札価格が96円00銭と市場予想96円10銭を下回り、大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は20銭と前回の55銭から縮小。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.46倍と前回の3.06倍から上昇した。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

日本株は反発。TOPIXの上昇率は一時1%を超えた。円安推移に加え、過度のリスク回避姿勢が和らいだことで電機や機械など輸出関連株の一角、直近の下げがきつかったソニーグループやサンリオなどコンテンツ関連銘柄が上昇。国内外の金利高や日銀の継続的な利上げ観測から金融株も買われた。銀行株はモルガン・スタンレーMUFG証券が強気のセクター判断を維持した。

みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、円安と米株先物の上昇で最近の米株安の流れが「少し休止状態になる」との期待が広がり、日本株にも買い戻しが出たと指摘。日銀総裁の発言に関しては時期は別として、どこかで追加利上げするとの見方から金融株が買われている部分もあると話していた。

しかし、トランプ米政権の関税政策と発言に市場は翻弄(ほんろう)されており、積極的に株を買うことはまだ難しい」とも三浦氏は語った。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

(表中の円のニューヨーク終値比を「安」に訂正します)

--取材協力:船曳三郎、アリス・フレンチ.

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