(ブルームバーグ):JPモルガン・アセット・マネジメントのマルチアセット戦略チームは、米経済がリセッション(景気後退)に陥る確率を15%から20%に引き上げた。しかし同チームを率いるデービッド・レボビッツ氏が顧客に伝えているのは「押し目買いの準備を整えよ」という楽観的なメッセージだ。
10日の米金融市場では株式が売り込まれる一方、国債には逃避買いが膨らんだ。トランプ政権の関税や連邦政府職員の大量解雇による景気悪化懸念が強まった。
しかしレボビッツ氏が投資家に届ける言葉は、不安を和らげるものだ。リスクプレミアムは急上昇したが、クレジット市場はまだ底割れしておらず、経済指標も今のところは景気拡大の継続を示唆しているという内容だ。
リセッションへの不安は深まったが、レボビッツ氏の見方では相場が下落しているのはバリュエーションが高い、つまり投機的な資産だ。米経済はなんとか切り抜けるとの確信から、同氏はS&P500種株価指数が5500を割り込んだら、米ハイテク株と米金融株に買いを入れるチャンスだと推奨する。この水準は10日終値から2%ほど下げたレベルだ。
「今の売り浴びせがもう少し続く可能性は十分にあるが、だからといって逃げ出すのではない」とレボビッツ氏。3兆6000億ドル(約530兆円)の資産配分で優先順位の形成に関わる同氏は「クレジット市場から伝わるのはどちらかというと、経済が問題なく推移しているというメッセージだ。金利や株価だけを見ている場合に受ける印象とは対照的だ」と説明した。
政治的な不透明感が深まる中、ウォール街のストラテジストらはリスク志向の戦略を今後どうするか頭を抱えている。減税と規制緩和を掲げるトランプ政権の誕生で、ビジネスが活況を迎えると期待していた市場では、先行き観の変化が鮮明になっている。JPモルガン・アセット・マネジメントは年末のS&P500種水準を6400と予想。現在から14%の上昇余地をみている。

レボビッツ氏は2月の米雇用統計で雇用者数が着実に伸びたほか、最新の企業決算が「かなり好調」だったと指摘。「政府は貿易と移民に関する痛みを伴うアジェンダを先行し、その先にニンジンがぶら下がっているとわれわれは考えていた」と述べ、「今の市場は特に混乱している」と続けた。
同氏とそのチームはこの数週間、株式のエクスポージャーを縮小し、その分を高利回り債に振り向けるよう投資家に推奨している。株式の中でも米国ではなく中国や日本に機会があるとしたほか、アンダーウエートとしていた欧州のポジションを解消した。
しかし強気派が消えたわけではない。UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのキラン・ガネシュ氏もその一人だ。同氏のチームはヘッジを増やしながらも、株売りに転じてはいない。
「上昇局面に備えるのは今なお理にかなう」とガネシュ氏はインタビューで、人工知能(AI)や電子化の分野を挙げた。「われわれが考え、今もなお考慮すべきなのは、現政権は早期の勝利達成と成功を目指していることだ」と述べた。
関税と政府支出削減が米経済の成長を損なう懸念にもかかわらず、JPモルガンのレボビッツ氏は米国のビジネスサイクルに対しておおむね建設的な見方を変えていない。
「経済はアニメのワイリー・コヨーテとは違い、崖から転落してはいない」とレボビッツ氏。「しかし成長ペースが減速しつつあるのは間違いない」と続けた。
原題:JPMorgan’s Lebovitz Readies to Buy Despite 20% Recession Bet22(抜粋)
--取材協力:Alexandra Semenova.
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