ENEOSホールディングス傘下のJX金属は、新規株式公開(IPO)の仮条件を1株当たり810-820円に決めた。想定価格862円を下回った。

3日に開示された訂正有価証券届出書で明らかになった。仮条件を基にした売り出し規模は最大4390億円規模となる。19日に東京証券取引所プライム市場に上場する予定で、公開価格は10日に決まる。想定される時価総額は最大7600億円規模となる。

昨年上場した東京地下鉄(東京メトロ)を上回り、2018年のソフトバンク上場以来の大型IPOとなる見通し。昨年6年ぶりに高水準だった国内IPO市場の勢いが今年も続くのかを計る試金石ともみられているが、仮条件が想定価格を下回ったことで、市場の先行きを不安視する見方も出ている。

GCIアセット・マネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、JX金属の仮条件決定を受けて「IPO市場の懸念材料となった」と指摘。想定価格を下回ったことで、上場後の株価が振るわないとの印象を与えかねないとの見方を示した。

半導体セクターの強弱観反映

JX金属は半導体材料事業を手がけており、IPOの需要動向は足元で株価の調整色が強まっている半導体セクターに対する投資家の強弱観を反映することになる。

訂正有価証券届出書によると、仮条件の決定に当たり機関投資家などにヒアリングした結果、半導体材料事業や情報通信材料事業について、市場の将来性があるなどの評価を得たが、上場日までの株式市場の変動リスクなども考慮したという。

同社はスパッタリングターゲットと呼ばれる材料では世界シェアの6割超を握り、米ハネウェル・インターナショナルや中国のコンフォン・マテリアルズ・インターナショナル(寧波江豊電子材料)などと競合している。

有価証券報告書によると、半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)や米インテルなどが顧客。前期(24年3月期)の営業利益862億円のうち、半導体材料事業が264億円と全体の3分の1近くを稼ぐ。今期(25年3月期)の全体の営業利益計画は前期比11%増の957億円。

今回のIPOでは、JX金属株を全て保有する親会社のENEOSが持ち分の約半分を国内外で売却する。エネオスは、25年度までの中期経営計画で株主資本利益率(ROE)10%以上を目指す方針を掲げており、IPOで調達した資金は株主還元や脱炭素化への投資に充てる。

2月14日のIPO発表以降、日経平均株価は米関税懸念や半導体株安を受けて4%超下落した。オルタス・アドバイザーズの日本株戦略責任者、アンドリュー・ジャクソン氏は、「投資家はテックや人工知能(AI)といったテーマに対し、明らかにリスク回避の姿勢を強めている」と指摘。JX金属の上場は「タイミングが良くない」との見解を示した。

(最終段落に市場関係者のコメントや背景を追加し更新します)

--取材協力:アリス・フレンチ、沢和世.

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