(ブルームバーグ):米シカゴ連銀のグールズビー総裁は、このところ見られる生産性の伸びを称賛しつつ、生産性向上による経済効果を過度に期待すれば金融当局を「難しい立場」に追い込むことになりかねないと警告した。

総裁はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、「そうした生産性向上への期待が大き過ぎると、短期的に景気を過熱させ、2000年に見られたような過剰投資につながり得る。当時はそれがリセッション(景気後退)の先触れとなった」と指摘。「そうした短期的な過熱により、金融当局はインフレとの闘いにおいてより慎重にならざるを得なくなる可能性がある」と語った。グールズビー総裁は、28日に行われる生産性に関する講演を控え、26日にブルームバーグ・ニュースとのインタビューで話した。
28日はスタンフォード大学で開かれる会議で講演。事前に配布された原稿によれば総裁は、このところの生産性の伸び加速について「奇妙かつ素晴らしい」と表現した。
労働生産性は、経済効率を示す指標として注目されている。米労働統計局のデータによれば、ここ数年は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前のトレンドを上回る水準に上昇している。

新しいテクノロジー
生産性向上の背景として総裁は、いつくかの新しい動きが寄与している可能性があると指摘。企業の在宅勤務方針やパンデミック発生時の失業者急増に伴う労働力の再配分などを挙げた。ただそうした動きはあくまで一時的な現象と考えられる。
テクノロジー、具体的には人工知能(AI)がここ数年の生産性向上の原動力になっていることを示す証拠があると、グールズビー総裁は指摘。AIは、経済のさまざまな業界に行き渡る中で、より長期的な影響をもたらす可能性があると述べた。
グールズビー氏は「AIであれ、他の何かであれ、この生産性の急速な向上が新しいテクノロジーの成果なのであれば、歴史はそれが可能であり、単に一時的な上昇というわけではないことを示している」と発言。電気やコンピューターといった過去の例を挙げた。
総裁は、新たなテクノロジーが「急速かつ持続的な生産性向上の時代を切り開く」ことに期待しているとしつつも、生産性の急上昇が継続するかどうかを見極めるのは困難だと強調した。
1990年代から2000年代初頭におけるコンピューターの成長で見られたように、投資家は新しいテクノロジーの可能性を過信することがある。コンピューターとインターネットは経済に革命的な影響をもたらした一方、1990年代後半の株価急上昇と関連技術への過剰投資が、2000年代早期の景気低迷に拍車をかけたと、グールズビー氏は指摘した。
原題:Fed’s Goolsbee Warns Against Overreliance on Productivity Gains(抜粋)
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