(ブルームバーグ):シンガポールを拠点とするヘッジファンドのキングズコートキャピタルは、株式ロングショート戦略で自動車メーカーのスズキをはじめとした日本株に積極的に投資して高いリターンにつなげている。
キングズコートは昨年、33%の運用益を獲得。ベンチマークのMSCI ACアジア太平洋指数のトータルリターン9.6%を大きく上回った。現在の保有上位3銘柄はスズキ、ソニーグループ、光通信の日本株で、年初来パフォーマンスはいずれも米S&P500種株価指数を上回る。
組み入れ1位のスズキは、インド自動車最大手の子会社マルチ・スズキ・インディアが稼ぎ頭だ。ゴールドマン・サックス証券で自動車アナリストを務めた最高投資責任者(CIO)の劉宇(リュウ・ユウ)氏はブルームバーグとのインタビューで、スズキのインド市場での強みが、トランプ米政権による関税や中国の電気自動車(EV)メーカーとの競争といった自動車業界を襲う荒波からの防波堤になると述べた。
多くの自動車メーカーが電動化にかじを切った中、「スズキはエンジンやハイブリッドにこだわり続けている」点に劉氏は着目。「インド市場ではガソリン車、ハイブリッド車が主流」という未来を予測し、EVにシフトした欧州メーカーに対するスズキの優位性はさらに高まると読む。
人口14億人のインドで乗用車の年間販売台数は400万台前半。普及率はまだ低く、今後高い伸びが期待できる。インド経済に減速の兆しがあっても、スズキはインドからアフリカへの完成車の輸出などで成長を継続、利益マージンも改善して将来性への確信度をより深めたと劉氏は語る。
スズキの株価は2022年の安値から2倍超になった。同期間にMSCI世界自動車株指数(円建て)は35%上昇しており、約3倍のパフォーマンスを上げた計算だ。

組み入れ2位のソニーGについては、人工知能(AI)の普及で需要と供給の両面から恩恵を受けると劉氏は指摘する。株価は好調な四半期決算を発表した昨年11月以降、上昇基調にある。
劉氏は、AIによりゲームの開発は容易になるとみる。開発業者間の競争は激化するものの、ソニーのようにゲームのプラットフォームを持つ企業にはポジティブに働くと言う。需要面では、AIの浸透で余暇時間が増えることが追い風になるとして、エンターテインメント業界には強気の姿勢で臨む。
国別のエクスポージャーは日本が7割を占め、次いで中国が約15%。ファンドの1月のリターンは5.2%で、ベンチマークの1.4%を上回った。
劉氏はゴールドマンを退職後、ミレニアム・キャピタル・マネジメントなど複数の運用会社を経て21年にキングズコートを設立した。預かり運用残高は現在4億ドル(約600億円)に達した。社名は、劉氏が卒業したペンシルベニア大学ウォートン校の学生寮から取った。
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