トランプ米大統領が各国の税制や規制にも批判の矛先を向けたことで、世界経済が大きな混乱に見舞われる可能性が出てきた。

トランプ氏は13日、貿易相手国が課す関税やその他の税、規制、為替レートなどの貿易障壁の合計に基づいて、米国が課す関税を新たに算出するよう経済担当高官に指示した。この「相互」関税は国ごとに算出される。4月1日までに提出される一連の報告書で明らかになる予定だ。米当局者によると、まずは対米貿易黒字が最も大きい相手国について調査する。

トランプ氏は選挙戦で一律関税の導入を掲げていたが、相互関税はこれに代わるものだとの認識を示している。米国の貿易データによると、相互関税によって欧州連合(EU)や中国、インド、メキシコ、ベトナムなどの国々が即座に標的となる。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は14日、トランプ氏が検討している相互関税は「誤った方向への一歩」だと批判。米国は「関税を引き上げることで自国民に課税することになる。企業のコストを上昇させ、成長を抑制する一方でインフレを押し上げる」と述べた。

他の主要貿易相手国の反応も素早かった。トランプ氏は13日に行ったインドのモディ首相との共同記者会見で、両国が貿易交渉を開始すると明らかにした。インド政府当局者によると、同国は米国からの石油・ガスの輸入を拡大したい考え。日本やベトナムなど複数の国も、すでに米国産石油・ガスの輸入拡大を表明済みだ。

アジアの輸出国

日本政府は14日、米政府との間で意思疎通を開始し、適切に対応していく姿勢を表明。武藤容治経済産業相は閣議後会見で「既に米国政府とは意思疎通を開始している。わが国の国益に資する形で日米の経済関係を進化、発展させるべく適切に対応させていただく」と語った。

台湾の頼清徳総統は中国に対する防衛力強化をアピールするため、軍事費の増額を表明。韓国は米国製品に対する実質的な関税率の低さを強調する声明を発表した。米政府高官によると、トランプ氏は米国を不当に利用しており、相互関税のターゲットとなるかもしれない国として日韓両国を名指ししている。

トランプ氏の計画が実行されれば、米国の関税政策は過去ほぼ1世紀にわたって続いてきた従来の方針から大きく転換することになる。また、特別な貿易協定を結ばない限り、すべての世界貿易機関(WTO)加盟国に関税などで「最恵国待遇」を与えなければならないという現在の国際貿易ルールは大きな打撃を受ける。「相互主義」との言葉はこれまで、むしろ関税引き下げを意味していた。

VATが標的に

トランプ大統領は今回、非関税障壁についてもやり玉に挙げた。中でも付加価値税(VAT)を問題視しており、他国の輸出業者は米国の輸出業者よりも不当に優位になると主張している。国際通貨基金(IMF)によると、世界では160カ国以上がVATか類似の消費税を導入している。

 

VATを導入しているEUなどの国・地域では、輸出業者が製品の出荷時にVATの払い戻しを請求できる一方、EUに輸入される米国製品には加盟国によって15-20%か、それ以上のVATが課されるため、欧州企業は米企業に比べて不当に有利に扱われていると、トランプ氏らは主張している。トランプ氏は「VATは関税だ」との立場だ。

キャピタル・エコノミクスの北米担当チーフエコノミスト、ポール・アシュワース氏はリポートで、トランプ氏の相互関税は一律関税より米経済に大きな打撃を与える可能性が高いと述べている。

VATに各国の平均最恵国関税率を上乗せするだけで、米国の主要貿易相手国に対しては相当な報復関税が課されることになるとアシュワース氏は指摘。米国がVATと最恵国税率を合わせた相互関税を課した場合、最も大きな影響を受けるのはインド(29%)で、とブラジルや欧州連合(EU)が続くという。

相互関税によって最も大きな影響を受ける国・地域

このような関税を導入するだけで、米国が輸入品に課す平均実効関税率は現在の3%から20%程度に上昇するだろうと、アシュワース氏は予想。これに伴い、米国のインフレ率は一時的に上昇し、今年後半には約4%に押し上げられる可能性があると分析している。

新たな局面

ブッシュ(子)政権で通商担当高官だったジョン・ベロノー氏は、米国の動きは「世界貿易における新局面の幕開け」を告げていると話す。米国が自国の持つ力を利用して国際ルールに影響を与えるのではなく、財の二国間貿易に影響を与えようとしている点が従来から異なるという。関税を巡る貿易戦争をエスカレートさせることなく、米国が新たなディールを交渉できるというのが、期待できる最善のシナリオだと同氏は話した。

原題:Trump Widens Trade Fight to Include Global Taxes and Regulation(抜粋)

--取材協力:Josh Wingrove、Jennifer A Dlouhy、Akayla Gardner、Jana Randow、Katia Dmitrieva、Tom Rees.

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