イングランド銀行(英中央銀行)の利下げが家計や政府の借り入れコストに反映されていない。リーブス財務相が公約した経済成長の実現と財政立て直しが一段と難しくなっている。

英国では昨年8月の金融緩和局面入り以降、スワップレートと国債利回りが上昇しており、市場は米国の動向に一段と左右されている。

こうした状況は、金融環境緩和でインフレ退治の手を緩め低迷する英経済を下支えしたいベイリー中銀総裁に難題を突き付けている。リーブス財務相にとっても頭痛の種だ。増税予算で失墜した信頼を回復し、自身が掲げる債務削減目標を達成する上で同相は金利低下を必要としている。

中銀は6日、足元の緩和局面で3回目となる政策金利引き下げを発表。ただ今回も実体経済にほとんど恩恵はなかった。

住宅ローン金利の基準となる5年物ポンドスワップレートは、中銀の利下げ開始時を約16ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回る。5年物英国債利回りは利下げ局面入り後の上昇幅が41bpに達した。

中銀によると、住宅ローンとして非常に人気の高いローン資産価値比率(LTV)75%のローン金利は昨年10月以降に上昇。個人向けローンやクレジットカードの借入金利も昨夏より高い。

利下げ波及が限定的な背景には、政策金利引き下げを漸進的に進める中銀のアプローチがある。また、労働党政権が、追加借り入れを一部当て込んだ投資計画を掲げ、より拡張的な財政政策に動いていることがある。

昨年10月末の予算案発表時点でリーブス財務相はルールを守れなくなるまでの余裕を99億ポンド(約1兆8600億円)と見込んでいたが、こうした財政のゆとりも、国債利回り上昇で既に吹き飛んだ。

米国の市場が英市場に多大な影響を与えているという懸念もある。米国では政策金利が景気抑制的な水準に維持される見通しで、トランプ政権下にあって財政政策は緩和的にとどまると予測される。S&Pグローバル・レーティングは米10年国債利回りの動きの80%が英国債に反映されると推計している。

原題:Bailey Wants to Cut Borrowing Costs But Markets Have Other Ideas(抜粋)

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