3カ国は対抗措置へ、それに対し米国はさらなる税率引き上げの意向、関税引き上げ応酬の恐れ

米関税措置に対し、カナダは300億カナダドル相当の米輸入品に25%の関税をかけ、さらに1,250億ドル相当分を追加するとしています。メキシコも関税措置を含む対抗策実施の意向を明らかにしており、中国は世界貿易機関(WTO)に提訴し、相応の対抗措置をとる考えを示唆しています。なお、米大統領令には、報復措置に対するさらなる税率引き上げや対象品目の拡大が明記されており、関税引き上げの応酬となる恐れがあります。

米ホワイトハウスは、カナダが違法薬物対策と国境警備で米国に協力するまで、メキシコは違法薬物対策で協力するまで、課税を続けると表明しています。また、中国に対しても、違法薬物対策で、全面的な協力を確保するまで課税を続けるとしています。米関税引き上げは2月4日から実施されますが、関税の解除には、少なくとも米国が、それぞれの国から十分な協力を得られたと判断することが必要と思われます。

米関税引き上げとカナダ、メキシコの報復は経済や市場にマイナスだが2月4日までの動向に注目

関税引き上げによる世界のマクロ経済や金融市場への影響は、今後の米国と、カナダ、メキシコ、中国との協議の進展次第ですが、米関税引き上げは2月4日からのため、直前で関税撤回の可能性も残ります。米国の関税実施と、カナダ、メキシコの報復関税を仮定した場合、各国の実質GDP成長率へ悪影響をもたらすと予想され、追加的な関税引き上げ実施となれば、マイナスの影響がさらに広がることになります。

株式市場は、いったんは総じて軟調な動きが予想され、景気敏感なシクリカル銘柄よりも、景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄が選好されやすい地合いが予想されます。為替市場では目先、米ドル、日本円、スイスフランの選好が見込まれ、長期金利は米国で上昇圧力が残る公算が大きいと思われます。ただし、これらの動きは前述の通り、米国と3カ国との協議の進展次第であり、まずは2月4日までの動向が注目されます。

(※情報提供、記事執筆:三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩)