(ブルームバーグ):英国のスターマー首相は28日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、英国経済は「好転し始めている兆しが見えつつあると思う」と語った。労働党政権発足から約6カ月たち、市場の混乱などの苦難を経て、同氏は産業界との関係再構築を試みている。
スターマー氏は「政権の最優先事項は成長だ。成長、成長、成長」と強調してみせた。 英国が「規制を撤廃し、計画の阻害要因を取り除き、人工知能(AI)を活用して前進する」と述べた。
米国のトランプ大統領が導入の可能性をほのめかしている関税について、スターマー氏は、「すでに両国間には膨大な貿易量があり、より良い通商関係を築く基盤がある。それをさらに発展させなければならない」と述べ、通商関係の改善を望む考えを示唆した。

英国経済は活気を欠き、消費者や企業の信頼感も弱い。こうした中、労働党政権は規制計画の全面的な見直し、長く遅れていたインフラ計画の承認、年金規則の緩和といった成長促進のための様々な施策を発表し、政権スタート時の不安定な状態から抜け出そうとしている。リーブス財務相は29日の演説で、より広範な成長戦略を説明する予定だ。
インタビューの前にも、スターマー氏はブルームバーグのロンドン支社で国内大手企業の最高経営責任者(CEO)らとの会合に臨んだ。同氏とリーブス氏は会合の場で、企業が年金基金の余剰分を投資に回し、数十億ポンドの投資資金を確保できるようにする計画を明らかにした。
会合には、 英住宅ローン大手のロイズ・バンキング・グループのチャーリー・ナンCEOとネーションワイド・ビルディング・ソサエティーのデビー・クロスビーCEO、食料・雑貨小売り大手テスコのケン・マーフィーCEOを始め、食品大手ユニリーバ、通信大手ボーダフォン・グループの代表者らが出席した。

スターマー氏とリーブス氏は、富の創出と投資を優先する政策を掲げて総選挙に勝利したものの、政権に就いた途端にその方針をほごにしたと非難されている。
公式データによると、英国の11月の国内総生産(GDP)は0.1%増と、市場予測の0.2%増を下回った。9、10月は0.1%減だった。1月の製造業者の信頼感指数は過去2年間で最速のペースで悪化し、民間部門の活動はほとんど成長せず、企業は金融危機以降で最も速いペースで人員削減を行っている。
会合でスターマー氏は、経済の拡大が政権の「最優先の使命」で、閣僚は「内閣のすべての決定に成長を組み込む」と語り、実現のためには民間部門との協力が必要だと訴えた。
また、規制が多過ぎることに対する企業からの批判を政府として「はっきりと耳にしている」と明言。規制自体にも「一貫性がない」と指摘した。さらに、AIは経済の「ゲームチェンジャー」になるとの見通しを示し、自身の政権のプロジェクトとして捉えていると述べた。
一方、スターマー氏はインタビューで、トランプ氏が領有権獲得を主張しているグリーンランドについて問われ、欧州の同盟国であるデンマークを支持する姿勢は見せなかった。「英国と米国の関係において私が対処しなければならないことの中心ではない問題について、コメントするつもりはない」と述べた。
原題:Keir Starmer Says UK Economy Is Starting to Turn Around (1)(抜粋)
(発言の詳細を加えて更新します)
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