(ブルームバーグ):トランプ米大統領は27日、外国製半導体チップや医薬品に近く関税を発動する方針を表明した。鉄鋼と銅・アルミニウム製品にも関税を賦課すると述べた。全ての輸入品に課すと公約してきたユニバーサルベースライン関税(一律関税)については、2.5%より「大幅に高く」設定したい考えを示した。
米国のサプライチェーン再構築を目指し、大統領就任後に準備を進めてきた包括的な関税制度に関し、詳細な概要の一部が発言で示された格好だ。
トランプ大統領は一律関税を巡り、「それがどうなるか念頭にあるが、設定はまだだ。だが、わが国を守るために十分なものとなるだろう」と大統領専用機内で記者団に発言した。
米上院が27日に財務長官人事を承認したスコット・ベッセント氏が一律関税を2.5%からスタートさせる案を支持しているとの報道について問われると、ベッセント氏がそれを支持していると思わず、自分自身も支持しないと答えた。
トランプ氏はこれより先、フロリダ州マイアミのリゾートで開かれた下院共和党議員らとの会議で演説し、「極めて近い将来に外国製コンピューターチップと半導体、医薬品に関税を適用するつもりだ。これらの必需品の生産を米国に戻すことが目的だ」と語った。
「この状況から抜け出す唯一の方法は、工場を建設することだ。税金や関税の支払いをやめたいなら米国内に工場を建設しなければならない」と訴え、カナダとメキシコから輸入する自動車への関税適用の可能性も強く示唆した。
トランプ大統領は、カナダとメキシコからの輸入品への25%関税、10%の対中追加関税を2月1日から課すことを検討していると先に明らかにした。

一方、米政府は特定の先端半導体技術の輸出を禁止し、エヌビディアのAI向け先端半導体の販売を制限することで、中国のAI技術の進歩を抑え込もうとしてきた。
しかし、中国のスタートアップ企業DeepSeek(ディープシーク)が低コストで開発した新たな生成AI(人工知能)モデルの登場により、限られたリソースで性能向上を追求した結果、中国のAIエンジニアが禁輸の影響を乗り越える手段を見いだす状況が浮き彫りになった。
27日の米株市場では、米欧のテクノロジー企業の優位が崩れかねないとの動揺が広がり、エヌビディアは過去最大の時価総額減少に見舞われた。半導体への関税に言及したトランプ大統領の演説は、その数時間後に行われた。
トランプ氏は「中国企業によるディープシークAIのリリースは、わが国の産業にとって、勝つためにはレーザー光線のように競争への集中が必要という警鐘となるはずだ」と主張。ただ伝えられる画期的成果については、「良いことだ。それほど金をかけずに済む」」と評価した。
外国為替市場では、トランプ氏の発言を受け、米ドルが円など主要通貨に対し上昇。アジア時間28日の取引で、リスクに敏感な豪ドルとニュージーランド・ドルは、対米ドル0.7%下落した。トランプ政権の関税政策が他の国・地域の通貨に打撃を与え、物価圧力を高めかねないとの不安が背景にある。
原題:Trump Vows ‘Near Future’ Tariffs, Calls DeepSeek Progress ‘Good’、Dollar Climbs as Trump Puts Tariff Threats Back on the Agenda(抜粋)
(トランプ氏の発言などを追加して更新します)
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