(ブルームバーグ):ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任した今、市場と経済には新たな、そしてこれまでとは大きく異なる推進力が生まれている。連邦準備制度理事会(FRB)のことは忘れてしまおう。米国の見通しは、関税から不法移民の強制送還に至るまで、大統領が自身の計画をどの程度、どのように実行に移すかによって大きく左右されるだろう。
今後、何が起こるのか。それは非常に難しい質問だ。とはいえ、ある程度の経験的予測は可能だ。以下は筆者の考え。
トランプ氏は輸入関税を以前よりも大幅に引き上げるだろう。少なくとも、1期目の3%から10%までにだ。大統領は関税を信奉しており、優れた交渉手段かつ収入源だと捉えている。今後10年間で国内総生産(GDP)比で約6%の財政赤字が見込まれているため(2017年の減税延長がないとの前提)、トランプ政権には歳入が必要になる。その結果、輸入業者がコストを転嫁し、保護された国内生産者が価格を引き上げるため、今後1年間にインフレ率は25-50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇する可能性が高い。この価格ショックは、すでにインフレ率がFRBの目標値である2%を上回っている時期に起こる。特に貯蓄の余裕がなく、収入の多くを輸入品に費やす低所得世帯の消費を抑制するだろう。
トランプ氏は不法移民の国外追放を実行するだろうが、筆者はそれほど多くはないと予想している。何百万人も米国から追放することは、現実的には困難だ。徹底的な取り組みには数カ月ではなく数年を要し、その結果として生じる労働力不足は経済的にあまりにも大きな打撃となるだろう。より少ない人数、例えば有罪判決を受けた犯罪者に絞ったとしても、成長を制限している労働力不足を悪化させる。バイデン政権による国境での取り締まり強化やベビーブーマーの引退、働き盛り層のすでに上昇している労働参加率を考慮すると、ささやかな数の国外追放でも労働供給の年間増加率を0.5%未満に抑制する可能性がある。これは、実質GDP成長率が最大でも1.5-2.5%にとどまることを意味する。
トランプ大統領と議会は2017年の減税措置を延長するが、社会保障給付金やチップへの課税減免など、他の高額な選挙公約は実現しないだろう。予算の見通しが厳しいことを踏まえ、歳出削減を伴わない減税措置の追加には、一部の共和党議員が難色を示すだろう。コンセンサスがみられない。共和党は下院と上院の間で財政健全化に対する意欲に違いがある。一方、民主党は(州および地方税控除の増額を除いて)減税の拡大には反対でまとまりそうだ。
2025年については、これらすべてが困難な経済見通しを示唆している。市場とFRBがトランプ大統領の発言や行動に適応しようと苦闘する中で、インフレ率や金利の上昇、成長の鈍化、ボラティリティーの拡大が予想される。つまり、今後の混乱に備えよということだ。
(ニューヨーク連銀の前総裁、ウィリアム・ダドリー氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Trump’s Economics Are Anybody’s Guess. Here’s Mine: Bill Dudley(抜粋)
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