(ブルームバーグ):トランプ米大統領は21日、中国から合成オピオイドの一種フェンタニルが流入していることへの報復として、同国からの全ての輸入品に対する10%の関税賦課を引き続き検討していると語った。「恐らく2月1日を考えている」とし、来月にも実施の可能性があることも示唆した。
トランプ氏は2期目就任初日の20日、かねて表明していた対中関税を発表しなかったものの、21日の同氏の発言は同国が米国による関税賦課を逃れられない可能性を示唆した形だ。
トランプ氏はホワイトハウスのイベントで記者団に対し、中国からメキシコとカナダにフェンタニルが送られている事実に基づき、「中国への10%の関税について協議している」と話した。
また、トランプ氏は就任前の17日に行った中国の習近平国家主席との電話会談に関し、「関税に関してあまり話さなかった」とも述べた。
さらに、政権1期目に中国に大幅な関税を賦課して多額の関税収入を受け取ったとし、「私が大統領になるまで、中国は米国に10セントも支払うことがなかった」とコメントした。
トランプ氏の発言を受けて米ドルは他の主要通貨に対し上昇。アジア時間22日の取引でニュージーランド・ドルやオーストラリア・ドルが下落を主導し、円やオフショア人民元も下げた。中国の主要株価指数も低下した。
このほかトランプ氏は欧州連合(EU)に対しても批判の矛先を向けた。「他の国々も米国にひどいことをしており、中国だけでない」とし、「米国の対EU貿易収支は3500億ドル(約54兆5000億円)の赤字で、彼らはわれわれを非常に不当に扱っている。彼らは関税の対象になるだろう」と話した。
昨年の米大統領選でトランプ氏は、全ての国・地域からの輸入品に対する一律関税や最高60%の対中関税を公約。当選後には10%の対中追加関税やメキシコとカナダからの輸入品への25%の関税賦課の方針を表明していた。
トランプ氏は20日には、フェンタニルと不法移民がカナダから流入しているとして、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を2月1日までに賦課することを計画していると述べる一方、中国に対する関税を就任後直ちに発表することはなかった。
大統領はその代わりに、政権として世界における不公正貿易慣行に対処するとともに、中国政府がトランプ政権1期目に合意した第1段階の貿易合意を順守したかどうか調査するよう命じていた。
中国の丁薛祥副首相は21日、スイスのダボスで開催の世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、同国として「貿易黒字を求めているのではない」とし、輸入を拡大する方針を表明した。
ただ、トランプ氏がどのような法的権限に基づいて一連の関税賦課を命じることができるのかは不明だ。法律事務所ベーカー・アンド・マッケンジーは行政措置に関するリポートで、「トランプ政権の即座の行動が、直ちに新たな関税の賦課につながるわけではないが、大統領覚書は将来の関税措置やその他の措置の基礎を築くための、明確かつ計画的な取り組みを示している」との分析を示した。
ナショナルオーストラリア銀行(NAB)のストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏は最新の動向について、「意図的に不確実性を演出するトランプ政権の政策の一例だ」と述べ、「市場や貿易相手国・地域に疑念を抱かせ続けることはゲームの一部であり、不確実性とドルの安全資産買いを助長する」と指摘した。
一方、トランプ氏が10%の対中関税を引き続き検討中だとした発言を巡っては、多くの人々が懸念していたほど高率でなく、ややポジティブだと複数のアナリストは受け止めている。それでも、同氏の方針が固まっていない点を踏まえれば、市場のボラティリティーが高まる可能性があるとアナリストらはみている。
アバディーンの投資ディレクター、シンヤオ・ヌン氏は関税に関し、トランプ氏は動かないのではないかとの誤った印象が就任初日に広がった可能性があるが、同氏は行動するということを再確認する形になったと論評。「状況はこれから難しくなる一方だ」との見方を示した。
原題:Trump Says He Could Hit China With 10% Tariff From Next Month、Trump China Tariff Threat Less Aggressive Than Feared: Analysts、Dollar Pushes Higher After Trump’s Tariff Comments on China(抜粋)
(中国株の動向などを追加して更新します)
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