(ブルームバーグ):消費額の大きい訪日客(インバウンド)の完全復活が、より広範な企業の業績と株価の押し上げにつながるとの期待が株式市場で高まっている。
日本政府観光局(JNTO)によると、2024年に日本を訪れた外国人旅行者は約3700万人と前年比で47%増えて過去最高を更新した。旅行代理店のJTBの予測では、25年は円安や大阪・関西万博の開催が追い風となり、訪日客は4020万人までさらに増える見通しだ。
輸入品への関税賦課をはじめ、トランプ米政権の政策を巡る先行き不透明感が新年の株式市場に影を落とす中、データに基づき観光関連銘柄の値上がりに期待することは、相対的に安全な賭けと言える。政府の統計によると、訪日客による昨年の消費額は過去最高の約8兆1000億円。1人当たりの旅行支出は平均22万7000円と、新型コロナウイルス禍前の19年を43%上回った。
観光客数が増えるにつれ、その恩恵はより多くの銘柄に広がっていくと市場関係者はみている。英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツの寺田寛之シニアアナリストは、需要の高まりに乗じて価格を引き上げる場合、ビジネスホテル「ドーミーイン」の共立メンテナンスや、藤田観光、ティーケーピーといったホテル運営会社が大きな利益を得る可能性があると話す。
「共立メンテは今年強いだろう。需要は強く、価格上昇が利益を支え、さらに新規ホテルの開業も計画している」と寺田氏は述べた。
「小樽洋菓子舗ルタオ」などお土産に人気の菓子店を展開する寿スピリッツも株高期待の高い銘柄の一つだ。宮崎忠洋氏らゴールドマン・サックス証券のアナリストは今月、インバウンド観光客の増加が収益の成長につながるとの期待から、同社を日本株のトップピックに追加した。
百貨店を運営するJ.フロントリテイリングは、免税売上高の大幅増がけん引し、25年2月期第3四半期の事業利益が前年同期比で18%増えた。株価は24年に66%上昇し、東証株価指数(TOPIX)の18%高を大きく上回った。
リユースショップ運営のトレジャー・ファクトリーでもインバウンド客への高額品売り上げが増え、昨年3-11月の免税売上比率が約10%に拡大した。ペラムの寺田氏は、政府が計画する中国からの入国要件緩和によって「爆買い」で知られる中国人観光客が増えれば、同社は恩恵を受ける可能性が高いとみる。
観光業に依存する銘柄にとって、日本銀行が追加利上げに踏み切り為替市場で円高が進む可能性はリスクだ。金融市場は日銀が24日に政策金利を0.5%に引き上げる可能性を高水準で織り込んでいる。
ただ、シンガポール拠点のフィンテック企業iファストでリサーチおよびポートフォリオ管理に携わるホイ・シー・イェオ氏は、円がインバウンド銘柄に重大な脅威をもたらすほど強くなる可能性は低いと言う。「日銀の慎重姿勢を考えれば、円高のペースは緩やかになる」と同氏はみる。
4月から開催予定の大阪万博も観光関連銘柄の追い風になり得る。アジア太平洋研究所は、万博には海外から約350万人が訪れ、消費総額は約2000億円に上ると想定している。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.