(ブルームバーグ):トランプ米大統領が就任早々、メキシコ、カナダからの輸入品に最大25%の関税を計画していると表明した。日本を含む他の国への具体的な対応については明らかにしていないが、石破茂政権は米側の動向を当面見極めつつ、早期の首脳会談開催で信頼関係構築を急ぐ。
林芳正官房長官は21日午前の閣議後会見で、米新政権の関税政策が日本に与える影響について問われ、「現時点では具体的な内容は明らかではない」として、今後判明する措置の内容などを「十分に精査した上で適切に対応していく考えだ」と述べるにとどめた。加藤勝信財務相も、米国が導入する措置を注視し、「必要があれば、日本として対応をとっていく」との見解を示した。
一方、武藤容治経産相はメキシコ、カナダへの関税を課すとの発言について「内容を踏まえて日本企業への影響にも十分に精査していきたい」と指摘。日本の国益に資する形で米国政権と緊密に意思疎通を図る考えを示した。
トランプ大統領は現地時間20日、メキシコとカナダからの輸入品に最大25%の関税を2月1日までに賦課することを計画していると述べた。全ての国・地域からの輸入品に対する一律関税を検討する可能性があると述べる一方で、「まだその準備ができていない」とも語った。
米側は日本に対し、防衛力のさらなる増強や対米投資拡大も求める可能性がある。日米間では日本製鉄によるUSスチール買収計画をバイデン前大統領が阻止し、日本側からは懸念の声が上がっている。対日関税政策も不透明な中、2月前半に行う方向で調整と報じられている石破首相とトランプ大統領との首脳会談が今後の日米関係を占う試金石となる。
石破首相は21日午前、トランプ大統領との会談では、日米双方の国益を踏まえながら、世界平和や世界経済に「どう二国間の関係を生かすことができるかということを中心に真摯(しんし)な議論を行い、信頼関係を確立したい」と記者団に語った。
現地時間20日にワシントンの米連邦議会議事堂で行われた大統領就任式には岩屋毅外相が出席。日本の外相として初めてで、岩屋氏は「新政権が日米関係を重視していることの表れ」と今後の協力強化に期待感を示した。フェイスブックに投稿した。
日本企業は米経済に貢献-経団連会長
経団連の十倉雅和会長は20日付で発表したコメントで、日本による米国への直接投資残高は約8000億ドルと5年連続で世界1位で、全米で100 万人近くの雇用を創出するなど米国の経済・社会に多大な貢献をしてきたと強調。米政府に対し、「予見可能性が高く、企業が安心して投資できる環境の整備を望む」と注文を付けた。USスチール買収を巡る問題について直接的な言及はなかった。
トランプ政権に対して、現時点で日本企業は様子見する姿勢のようだ。マツダの広報担当者はメキシコ・カナダへの関税計画について、政策が出された後に内容を精査し、事業に与える具体的な影響を評価すると述べた。住友商事も、どういう影響が出るのか情報を精査し、状況を注視しているとした。
トランプ政権が、新たな液化天然ガス(LNG)輸出許可申請への対応を再開したことを受け、国内最大の発電事業者JERA(ジェラ)は、中長期ではLNGの安定供給につながるとして前向きに捉えていると説明。今後詳細が明らかになるとみて、注視するとした。
野村証券の西哲宏執行役員は21日、記者団に対し、トランプ大統領の政策に関する不透明感から、日本企業の業績見通しなどが「保守的になることがあり得る」と指摘。「そこはリスクファクターであり、注視していく必要がある」と述べた。
(野村証券執行役員のコメントを追加し、更新しました)
--取材協力:梅川崇、野原良明、香月夏子、佐野七緒.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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