(ブルームバーグ):新興国の国債発行は今年、記録的なペースで始まったが、米国債利回りの急上昇により、活況が失速する可能性がある。信用力の低い発行体が国際資本市場から締め出される恐れがあるためだ。
米国債の利回りは最近、大きく上昇。いったん落ち着きを取り戻しているが、投資家は20日のトランプ政権発足を受け、インフレにつながり得る政策が再開されるのではないかと懸念している。
トランプ大統領は貿易関税の引き上げや、不法移民の大規模な国外追放を公約。多くの移民が追放されれば、米国は労働力不足に陥るとの見方もある。
トランプ政権発足を見据え、多くの新興国が2025年に入り自国以外の市場で国債を急ぎ発行。年初来の発行額は約340億ドル(約5兆3000億円)相当に達し、1年前と比較し12%増えた。
国債を今年発行した8カ国のうちサウジアラビアやメキシコ、スロベニアなど7カ国は投資適格の信用格付けを得ている。例外はアフリカのベナンで、国債5億ドルの発行条件を16日に決めた。
格付けが高めの債券が好まれる傾向が、新興国の企業や政府系の借り手に影響を与えている。
ジャンク(投資不適格)級格付けの発行体、つまり主要格付け会社による格付けが「BBB-/Baa3」を下回る借り手による債券発行は25年に入り約60億ドルと、1年前に比べ7%減り、20年以来最も鈍いペースでの年初スタートとなっていることがブルームバーグが集計したデータが示している。
また、バーレーンのアラブ・バンキングは16日、起債を中止せざるを得なくなった。利回りが低過ぎると投資家が敬遠したためだ。
「新興国市場は米経済の堅調さと金利上昇、インフレの持続という『ノーランディング』仮説に適応しつつある」とフェデレーテッド・ハーミーズのシニアポートフォリオマネジャー、モハメド・エルミ氏は指摘。
トランプ政権による「『米国第一』主義に基づく政策の組み合わせにより、米国債売りが一段と加速し、新興国市場の借り入れコストがさらに上昇し得る」との見通しを示した。
ブルームバーグがまとめた指数によると、新興国市場のドル建て債の平均利回りは、過去5週間で40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、約6.84%に達した。
ジャンク級格付け「B」格付けを得ている借り手は、同期間に利回りが54bp上昇。こうした発行体は米国債の利回り変動やドル高の影響を特に受けやすいとされている。
原題:‘America First’ Stalls Emerging Markets Bond Sales Bonanza (2)(抜粋)
--取材協力:Jorgelina Do Rosario.
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