中国とトランプ次期米政権との間で、緊張と不確実性が再び高まる恐れがある。米中間の貿易戦争が勃発した第1次トランプ政権時よりも輸出への依存度が高まっている中国だが、国内経済は低迷している。

2024年の中国貿易黒字は過去最高の1兆ドル(約156兆円)近くに達した。これは国内総生産(GDP)の5%余りに相当する。昨年は景気拡大の3割程度を貿易黒字がけん引。その割合は1997年以来最も高い。先週発表された統計で示された。

習近平国家主席はデフレ継続や消費需要の低迷、不動産不況の長期化、人民元の下落圧力といった数多くの課題に直面しているが、外国市場への依存はこうした中国が抱える課題の克服をさらに難しくする。

中国国債の利回り低下は、世界2位の経済大国が一段と弱体化すると市場が想定していることを裏付けている。

こうした要因を踏まえ、中国政府は今年、野心的な経済成長目標を達成するため政府の借り入れを増やし続ける可能性が高い。しかし、米国など主要貿易相手国での保護主義の高まりは、中国にとって最も信頼性の高い成長要因の一つである輸出を脅かす公算が大きい。

BNPパリバの中国担当チーフエコノミスト、ジャクリーン・ロン氏は「昨年の中国経済における最大の明るい材料は輸出」で、「これは今年最大の問題が米国の関税になることを意味する」と指摘。

同氏は先週、トランプ氏が中国からの輸入品に10%の関税を課すことがBNPが想定する基本シナリオだと説明した。ただ、欧州連合(EU)や新興国が追随して中国を標的に関税を引き上げるかどうかは不透明だ。

米国が中国に対する追加関税を続ける中で、中国国外に工場を移転したり、中国以外の地域からの調達を増やしたりしている企業もある。米企業が中国から出荷された物品を直接購入する割合は、2017年末時点の19%から15%未満に低下した。

ベトナム

対中関税強化で一部の製造業が米国に戻ってくることが期待されているが、そのほとんどはベトナムなどの市場に流れている。ベトナムは現在、記録的な数量の中国製電子部品を輸入し、製品に組み立てた上で米国などへ輸出している。

中国の対ベトナム輸出は昨年、過去最高を更新。2国間貿易収支で見ると、ベトナムの対米貿易黒字は今や中国とメキシコに次ぐ世界3位だ。

中国の対米直接輸出の重要性は過去4年間で若干低下しているものの、世界一の経済大国である米国は依然として中国にとって最も重要な最終需要の市場で、昨年は5000億ドル余りの物品を購入。これは中国のGDPのほぼ3%に相当する。

米国が中国に新たな関税を課した場合、中国は以前と同様、関税で報復することが可能だ。中国政府は最近、一部金属の対米輸出を禁じ、米防衛企業10社余りに対する制裁措置を発動した。

シンガポール国立大学のアレックス・カプリ上級研究員は「中国の輸出規制への取り組みはより積極的になるだろう」と分析。

「米国の対中輸出規制にもかかわらず、24年に堅調な成長が見られたことにより、重要な鉱物や磁石、バッテリーなどの輸出に対する独自の規制や制約をさらに強化する自信を得ているかもしれない」との見方を示している。

原題:China Faces Trump’s Return Just as Reliance on Exports Soars (1)(抜粋)

--取材協力:Fran Wang、Yujing Liu.

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