世界の富豪上位500人の中でわずか3人しかいない中国人女性の1人が、起業家の周超男氏だ。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社である字節跳動(バイトダンス)の成長と人工知能(AI)ブームが周氏をアジア屈指の大富豪に押し上げた。

周氏(64)はデータセンター運営会社、潤沢智算科技集団(レンジ・インテリジェント・コンピューティング・テクノロジー・グループ)の創業者。同社は主要顧客であるバイトダンスのAI構想を可能にするコンピューティングパワーを提供している。

ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、潤沢智算科技の株価は2024年に105%上昇し、会長を務める周氏の資産は77億ドル(約1兆2000億円)となった。

中国人富裕層の資産は、不動産危機を背景とした3年にわたる減少から徐々に回復しつつある。習近平国家主席が推進する「共同富裕」政策は有力な事業主に富を集中させず、共に豊かになろうというもの。

周氏と潤沢智算科技はブルームバーグのコメント要請に応じなかった。

潤沢智算科技の業績は、中国政府によるAIインフラを巡る政策支援によって後押しされている。中国はこの分野で世界のリーダーとなるべく、米国に挑んでいるが、トランプ次期米大統領は米国の技術力と製造業を強化する方針で、AI半導体の輸出規制を一段と厳しくする可能性がある。

ムーア・インサイツ・アンド・ストラテジーのデータセンターアナリスト、マット・キンボール氏は「潤沢智算科技のようなデータセンター企業にとって真の課題は、輸出規制の対象となっているエヌビディアやAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)などのAIチップへのアクセスだ」と述べた。

北京にも近い河北省廊坊に本社を置く潤沢智算科技の大口顧客はバイトダンスに加え、美団やJDドットコム、華為技術(ファーウェイ)、国有の情報センターなど。

24年の届け出によると、潤沢智算科技は北京や上海、広州、深圳などの都市に61のデータセンターを構え、32万台以上のサーバーラックを保有している。24年1-6月(上期)の売上高は前年同期比112%増の36億元(約770億円)。

原題:ByteDance’s AI Makes Tycoon One of Asia’s Richest Women (1)(抜粋)

--取材協力:Venus Feng.

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