新興国が年初としては記録的なペースで国債を発行している。米国でトランプ政権が20日に発足する前に、資金を確保しようと各国政府が躍起になっている。

ブルームバーグの集計データによれば、新興国による1月1-7日の国債発行は260億ドル(約4兆1100億円)相当に達した。トランプ氏の大統領就任に伴い、新興国に打撃を与える通商政策が始まると投資家は懸念。米国債利回りは上昇している。

ボントベル・アセット・マネジメントのマネーマネジャー、セルゲイ・ゴンチャロフ氏は、「発行体は年初から一斉に市場に参入してくるが、今年は1月20日を念頭に置いているのは確かだ」と指摘した。

新興国市場の債券発行は昨年、過去5年で最も活況だったが、課題は山積している。トランプ氏が関税計画を推進するため国家経済の緊急事態を宣言することを検討していると、米CNNが8日に報道。これを受け債券が売られた。

ゴンチャロフ氏によると、これまでのところ、発行体は中期債や短期債を選択し、比較的リスクを抑えた戦略を取っているという。

新興国の発行体としては昨年トップだったサウジアラビアは年明けに120億ドル相当の債券を発行。メキシコの85億ドル発行が続く。ハンガリーとスロベニアも発行した。インドネシアは8日にユーロ建ての8年債と12年債を発行した。

債券は8日の取引で売られたが、ブルームバーグの指数によれば、新興国が発行したドル建て債の米国債に対する利回り上乗せ幅(スプレッド)は、2018年以来の低水準付近にとどまった。

ユニオン・インベストメント・プリバトフォンズのポートフォリオマネジャーで新興国市場の社債責任者を務めるセルゲイ・デルガチェフ氏(フランクフルト在勤)は、「まだ抑制気味の利回り水準を確保しようと1月20日より前に発行を目指す政府や企業が出てくるだろう」と予想。トランプ政権発足後の「米国債利回り水準にはいくらか不透明感がありそうだ」と語った。

原題:Trump Policy Jitters Spur Record $26 Billion EM Bond Flurry (1)(抜粋)

--取材協力:Kevin Simauchi、Zijia Song.

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