(ブルームバーグ):1990年代後半、米サンフランシスコ連銀の若きエコノミストだったメアリー・デーリー氏は生産性向上の分析で当時のグリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)議長を手助けした。
現在、同連銀の総裁を務めるデーリー氏は、米国の生産性が再び向上しつつあり、今回の原動力は人工知能(AI)だと考え始めている。ブルームバーグのポッドキャスト番組でのインタビューで、AIを業務に活用する企業について「至る所で目にしている」と語った。
「機械学習やロボット処理、自動化、人々や企業が行うこと」に触れ、「すぐに測定された生産性として顕在化するとは思わないし、期待してもいけないが、変化の推進力はそこにある」と話した。

生産性は米国でここ数年、実際に上昇しているが、その要因や持続性についてはエコノミストの間でも意見が分かれている。生活水準を押し上げる生産性向上の測定は非常に困難だ。
経済成長理論への貢献でノーベル経済学賞を受賞し、2023年に死去したロバート・ソロー米マサチューセッツ工科大学 (MIT)名誉教授は1987年に「どこもかしこもコンピューター時代だが、生産性の統計は別だ」と指摘していた。
90年代後半、IT(情報技術)革命がビジネスに変化をもたらし始めた際、グリーンスパン氏はエコノミストらに企業がテクノロジーを実際にどのように応用しているか事例を集めるよう求めた。その結果から実際に生産性が急上昇していると確信し、そこで得た結論が金融政策の指針となった。
グリーンスパン氏が「確かに正しかったことが判明した」とデーリー氏は述べ、「生産性があらゆる分野で向上し、最終的にデータが修正され、何が起こっているのかより正確に把握できるようになると、コンピューター革命だと分かった。同じことがAIでも起きているようだ」との見方を示した。
同氏はサンフランシスコ連銀の「新興テック経済調査ネットワーク」を通じて、グリーンスパン氏が一世代前に求めたような研究を再び実施しようとしている。
「われわれは研究者たちと多くの時間を過ごしているが、CEO(最高経営責任者)やCIO(最高投資責任者)とも多くの時間を費やし、彼らに『何をしているのか』と尋ねている。米国で、恐らく世界でも、こうした活用をしている企業が非常に多いことに驚かされる」と語った。
こういった発言を踏まえると、デーリー氏はAI強気派のようだ。
「テクノロジーをどのように活用すれば、チームをより強く、より有能にし、退屈な仕事をもっと減らし、仕事を成し遂げることができるかについて、企業は真剣に考えている」と説明。「私はそれが潜在的に大きな利益をもたらすと考えている。10年かかるかもしれないが、起こりつつある」と述べた。
原題:Fed’s Daly Reveals Her Bullishness for AI-Driven Productivity(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.