がんは老化の一種と言われており、長寿化にともない、がんと診断される人は増加している。

およそ2人に1人が一生のうちにがんと診断され、3人に1人ががんで亡くなると推計されている。

検査技術の発展による早期発見の増加や医療技術の進歩により、がん患者の生存率は向上しており、5年相対生存率は6割を超えている。
また、がん治療における平均入院日数は短くなっており、通院しながら治療を受ける患者が増えていること等から、近年、がん治療を続けながら日常生活を送る人が増えている。

こういった状況を背景に、国では「がん対策推進基本計画」や「働き方改革実行計画」に基づき、がん検診受診の推奨や、治療と仕事の両立を社会的にサポートするための環境整備に取り組んでいる。
しかし、二次予防として推進されているがん検診については、受診率は徐々に向上してきたものの国が目標としている50%には至っておらず、諸外国と比べても低い水準にとどまる。

そこで本稿では、人々は、がんについてどの程度の情報を知っているのか。
知っている情報によって、がん検診の受診やがん罹患時の備えに違いはあるかについてニッセイ基礎研究所がおこなったアンケート調査の結果から紹介する。

がん検診の実態

厚生労働省は、がんの早期発見と、死亡率の低下を目的とする対策型がん検診として、以下5つを実施体制の整った機関で受けることを推奨している。

●子宮頸がん検診(細胞診):20歳以上の女性 2年に1回
 ※HPV検査単独法が新たに追加。30歳以上の女性 5年に1回

●乳がん検診(マンモグラフィ):40歳以上の女性 2年に1回

●胃がん検診(内視鏡):50歳以上の男女 2年に1回
 ※胃部X線検査(バリウム検査)は40歳以上も可。年1回

●肺がん検診(胸部X線、高危険群で喀痰):40歳以上の男女 年1回

●大腸がん検診(便潜血):40歳以上の男女 年1回

第3期がん対策推進基本計画(2017〜2022年度)では、上記5つの検診について、検診受診率50%とすることを目標としてきた。
しかし、検診受診率は上昇傾向にはあるものの、いずれも2022年調査時点では目標に達していない。

OECDのHealth Statisticsによると、女性の乳がん検診(50~69歳)と子宮頸がん検診(20~69歳)は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ等がおおむね7割以上を達成しており、日本のがん検診受診率は諸外国と比べても低い。

2023年度から開始した第4期がん対策推進基本計画では、検診受診率の目標を60%に引き上げ、引き続き推奨を行うことになっている。
がん検診を受けない理由は受ける時間がないことや、費用負担が上位にくるが、がん検診を知らなかったことや、必要性を感じていないといった理由も多い。