(ブルームバーグ):トランプ次期米大統領が海外製品に対し関税の導入を示唆するなど世界経済に突風を巻き起こす中、日本株市場ではゲーム関連株が勝者になろうとしている。テクノロジー株の投資家が中国への依存度が高く、業績に不確実性が高まっている半導体製造装置株から資金をシフトさせているためだ。

ソニーグループや任天堂、カプコン、バンダイナムコホールディングス、コナミグループ、アカツキなどのゲーム関連株は11月初めの米大統領選以降、10%から20%台の上昇率となり、2%強上げた東証株価指数(TOPIX)をアウトパフォームする。10%以上下げたSCREENホールディングスをはじめ、東京エレクトロンやレーザーテックなど低調な半導体関連株とは対照的だ。
昨年の同期間は東エレクが10%超上昇、ソニーGや任天堂の上昇率が2-5%だったのに対し、「モンスターハンター」や「バイオハザード」シリーズが人気のカプコンは9.4%下げ、今年と正反対の動きだった。
岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストは「アニメやゲーム、エンターテインメントサービス関連株はトランプ氏の影響を受ける可能性が低い」とし、「多くの投資家は既に準備としてこれらのセクターに資金を移している」との見方を示す。
世界の半導体製造を巡るサプライチェーン(供給網)で日本は欠かせない重要拠点だ。米国向けをはじめ、国産半導体を強化する中国に対しても日本製製造装置の需要は高まっており、直近四半期の東エレク収益の中国依存度は41%、アドバンテストでも22%に及ぶ。トランプ次期政権下で米中の緊張が一段と強まる可能性があり、中国で稼ぐ収益構造は一転リスクになる。
大統領就任前のトランプ氏は既に11月25日、麻薬など違法薬物の流入を理由に、中国からの輸入品に10%の追加関税を課すと表明。カナダとメキシコからの全ての輸入品に25%の関税を課す文書にも署名する考えも示した。翌26日の日本株市場で東エレクやスクリンH、KOKUSAI ELECTRICなど半導体関連が下げた半面、ソニーGや任天堂のゲーム関連は上げた。

サンフォード・C・バーンスタインのアナリスト、ロビン・チュー氏は「マクロ的にも地政学的にも、中国リスクに不安感がある」と指摘。投資家の間でゲーム株は「ポジティブに見られており、政治とほとんど関係がない」と述べた。ソニーGや任天堂は家庭用ゲーム機の「プレイステーション」「スイッチ」を世界で販売し、多くの人気ゲームソフトシリーズも抱えている。
もっとも、MCPアセット・マネジメント・ジャパンの大塚理恵子ストラテジストは、ゲームは地政学リスクの影響を受けにくい分野としつつ、規制の影響を完全に免れることはできないと指摘した。具体的な例としては、米政府が行うグーグル解体のようなリスクはあるかもしれないと言う。
ただ、バーンスタインのチュー氏は、2025年はソニーGの人気ソフトシリーズの新作「ゴースト・オブ・ヨウテイ」や任天堂のスイッチ後継機の発表を控えており、「来年のゲーム関連銘柄のリスクは相殺されるだろう」と予測。テイクツー・インタラクティブのソフト「グランド・セフト・オート6」のリリースも追い風になるとみている。
ソニーGは今年に入り26%、任天堂は29%それぞれ上昇(17日終値時点)しており、TOPIXの15%を大きく上回る。ソニーは先週、およそ25年ぶりに上場来高値を更新した。
--取材協力:横山桃花.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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