米中対立の激化を受け、グローバル企業が中国拠点のあり方の見直しを迫られている。こうした脱中国の動きは第一次トランプ政権下での4段階にわたる対中制裁関税の引き上げがきっかけとなった。2025年1月には、第二次トランプ政権がスタートし、米国政府は中国製品に対してさらに高い関税を課すことが見込まれる。すでに、2024年11月25日、トランプ氏は大統領就任前にもかかわらず、麻薬などの違法薬物の流入を理由に、米国が既存のすべての課税に加えて中国からの輸入品に10%の追加関税を課すと発表したが、この税率はさらに引き上げられる可能性が高い。
これまでに高関税が課せられた商品については、多くの企業が中国以外の地域へ生産拠点を移転させている。有力な生産移転先としてベトナムが挙げられ、その優位性は圧倒的である。第二次トランプ政権による対中関税引き上げが実施された場合も、ベトナムの優位性は保たれる見込みである。ただし、ベトナムも労働力や電力の供給能力、輸出構造にリスクを抱えており、それらのリスクが顕在化した場合にはアジアの他地域にも生産移転先となるチャンスが拡大すると見込まれる。本稿では、(1)ベトナムの生産移転先としての優位性について現状とその要因について検証し、(2)構造的な問題から生じるベトナムでの生産拡大リスクについて考察を行う。そのうえで、(3)その他の地域への移転にも言及し、生産移転先の今後の展望について議論する。