女性が管理する資産は世界中で一段と増加しており、資産管理と慈善活動に大きな変化をもたらす可能性がある。

米コンサルティング会社マッキンゼーの予測によれば、米国だけでも女性が2030年までに運用可能な資産の約38%に相当する34兆ドル(約5140兆円)を管理する見通し。これは昨年の総額の2倍近くで、10年前はわずか7兆3000億ドル(29%相当)だった。

増加の最大の要因は、単純な人口統計のトレンドだ。ベビーブーマー世代の女性は平均すると男性より5年長生きし、家族の財産管理が裕福な夫から妻に委ねられるケースが増えている。高収入の職業を追求する女性が増えていることも変化を後押ししている。

「相続や離婚、仕事上の成功などにより、女性が世帯の経済的な主導権を握るケースが増えており、経済的な意思決定のリーダーシップ的役割を担うようになっている」とダイナスティー・ファイナンシャル・パートナーズのケーシー・ヨルゲンセン氏は指摘した。

50年前には自分名義の銀行口座開設やクレジットカード保有さえできなかった米国の女性にとって、これは大きな変化だ。現在、世界には数百人の超富裕層女性がおり、その中にはブルームバーグ・ビリオネア指数が追跡している資産9兆9000億ドルの約11%を保有する少なくとも62人の億万長者も含まれる。

もちろん、依然として大きな男女格差は存在する。女性の収入は男性の84%にとどまり、上場企業の経営幹部職に占める女性の割合は全体の12%に過ぎない。S&P500種株価指数構成企業で女性の最高経営責任者(CEO)は41人にとどまる。また、過去10年間で女性が管理する資産割合は徐々に増加しているものの、昨年は35%未満だった。

しかし、世界の富裕層に仲間入りする女性が増えるにつれ、これまで主に男性により男性向けに運営されてきたことで知られる資産運用業界は、新しい顧客層を引き付け、維持する方法の再構築を急いでいる。また、あらゆる年齢層で女性は男性より多く慈善団体に寄付する傾向にあることから、新たな寄付の流入も見込まれる。

ウェルスマネジメント会社ジュリアス・ベアの調査によると、世界の超富裕層(純資産3000万ドル以上)に占める女性の割合は、10年の6.5%から23年には11%に増加した。相続と自力で成した財産の組み合わせが要因だと調査で判明した。かつては、会社を一代で築き上げた裕福な男性が企業帝国を息子たちに引き継いでいたが、今では、より多くの女性がそのかじ取りを担うようになっている。

ボストン・コンサルティング・グループのマネジングディレクター兼パートナー、ベス・バイナー氏は「女性たちのニーズにより容易に応えることができるようになれば、組織に大きな経済的チャンスが生まれる」と指摘。「ウェルスマネジメントは世帯主がほぼ男性だった時代に設計されたものだ。今、われわれは女性のニーズに応えているのかと、立ち止まって考えてみる価値はある」と述べた。

原題:Massive Wealth Transfer Will Give Women $34 Trillion by 2030(抜粋)

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