(ブルームバーグ):11月の米雇用統計は米金融当局が今月利下げを決定する可能性を示唆したものの、重要なインフレ統計の発表を間近に控え、そう結論付けるまでには至らなかった。
11月の米雇用統計では、ハリケーンと大規模ストの影響で前月に急減速していた非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)が前月比22万7000人増と回復を示した。同時に失業率が上昇した一方、賃金の伸びは予想を上回った。
非農業部門雇用者数の3カ月平均は17万3000人増と、今年に入って見られた堅調なペースからは鈍化している。これらのデータは、労働市場は減速しているものの、おおむね堅調さを維持しているとの見方を裏付けており、複数の米金融当局者も同様の見解を示している。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米国担当エコノミスト、スティーブン・ジュノー氏は「労働市場は好調な状態にあり、米金融当局はその継続を望んでいるため、12月利下げに向けた十分な材料になるだろう」と指摘。「しかし、依然としてインフレ統計次第だと考えている」と述べた。
政策当局者は、労働市場の一段の軟化は望んでおらず、借り入れコストの引き下げはその予防手段になると強調している。しかし、依然として粘着性のあるインフレ率を警戒しており、数人の当局者は段階的な利下げを支持している。

雇用統計発表後の講演で、連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は、利下げは慎重に進めたいとの考えを改めて示した。パウエル議長も今週、同様の見解を述べた。

クリーブランド連銀のハマック総裁も雇用統計後に来年1月末までのもう1回の利下げを支持すると表明。シティクラブ・オブ・クリーブランド主催のイベントで、利下げペースを減速させるべきポイントに当局者は「いる、ないし近い」との見解を示した。
一方、最近のデータでは、インフレ率が米金融当局の2%目標に向かって低下する動きが停滞している可能性が示唆されており、来週発表される消費者物価指数(CPI)の重要性が高まっている。
ブルームバーグによるエコノミスト調査によると、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数の伸びは11月も引き続き頑強だったと予想されている。
米雇用統計を受け、12月の利下げ観測が強まった。先物市場が織り込む12月の利下げ確率は現時点で約90%に上昇している。
マッコーリー・グループのグローバル通貨・金利ストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏は、「次回の会合では利下げが決定されるだろう。米金融当局はすでにそうコミットしているし、それが変更されるようなデータの変化はない」と言及。「ただ2025年に関しては大きく変化している」と語った。
原題:Jobs Data Nudges Fed Toward a Cut, But Inflation Test Remains(抜粋)
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