11月の米雇用統計では、ハリケーンと大規模ストの影響で前月に急減速していた非農業部門雇用者数が回復を示した一方、失業率は上昇。労働市場は著しく悪化はしていないものの、減速傾向にあることが示唆された。

同統計に関する市場関係者の見方は以下の通り。

◎ペッパーストーンのマイケル・ブラウン氏

米連邦公開市場委員会(FOMC)が12月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを実施し、金融政策スタンスの正常化を継続するというのが、引き続き私の基本シナリオだ。労働市場も正常化を続けている

◎ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザカレリ氏

労働市場は軟化しつつあるものの、健全だ。雇用統計のヘッドラインの数字は強かったが、それでも次のCPI統計が非常に強い内容にならない限り、FOMCは労働市場の全体的な減速に留意し、12月の会合で25bpの利下げに動く可能性が高い。われわれとしては、CPIは大きなサプライズとはならず、FOMCが利下げするというのが基本シナリオだ。力強い経済成長、健全な労働市場、相対的に抑制されたインフレという前向きな状況を踏まえると、FOMCは利下げの継続が可能になり、その結果、強気相場は年末から来年早期にかけて続くだろう

◎プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏

今回の雇用統計は、12月利下げの可能性を補強するものだが、労働市場に対する不安をあおるものではない。ただ、労働市場には亀裂が生じており、米金融当局は注意する必要がある。一方で、平均時給の伸びは依然根強く、米金融当局は利下げを慎重に進めなければならない。12月利下げの可能性は高いが、2025年初頭から利下げペースを1会合おきに減速させる公算が大きい

◎ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ

今回の統計は現在の経済トレンドの継続を示唆しており、FOMCは継続中の金利正常化を進める可能性が高いが、一連の利下げが本格的な景気対策になる可能性は低い。12月にFOMCが利下げに踏み切る可能性は依然として高いが、次の景気サイクルで何が起こるかを見極めながら、その正常化プロセスを一時停止するところまできていることを考えると、細心の注意を払って検討する必要がある。その結果、株式市場は経済の安定と利下げ見通しで安心するかもしれないが、金利市場は将来のインフレへの影響を考慮すると、この状況を株式市場ほど評価しないかもしれない。今回の統計は、金融政策が見えやすくなったことで、ドルが安定する可能性も示唆している

◎LPLファイナンシャルのジェフリー・ローチ氏

実質賃金は伸び続けており、消費者は物価上昇にもかかわらず消費習慣を維持できる。失業率の上昇により、FOMCは12月会合で利下げを実施できるはずだ。しかし、利下げを実施した場合、インフレ率が著しく低下しない限り、来年1月に利下げを休止する可能性が高い。

◎ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏

今回の雇用統計を受けて、米金融当局は今月利下げすることが可能になったが、来週のCPI次第では変わる可能性もある。米金融当局はより忍耐強いトーンにシフトすると考えている。来年にかけて金融緩和の拡大を必要とするような圧力には直面していない。一方で、ターミナルレート(金利の最終到達点)とそこにどのように達するかという道筋も同じくらい重要になるだろう

原題:Stocks Extend Record-Breaking Run After Jobs Data: Markets Wrap(抜粋)

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