(ブルームバーグ):岸田文雄前首相は、新NISA(少額投資非課税制度)によって進んだ「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるため、同制度の改良とiDeCo(個人型確定拠出年金)の抜本的改革が年末の税制改正での「大きなポイント」になるとの見方を示した。

岸田氏は5日、ブルームバーグのインタビューで、動きは「始まったところ」であり、「問題はこれを持続できるか」だと指摘。今年1月に開始した新NISAにiDeCoを加えた「2本柱」で進める考えを鮮明にした。
岸田政権はデフレ経済からの脱却を目指した「新しい資本主義」を掲げ、33年ぶりの高い賃上げ水準や国内総生産(GDP)600兆円を実現させた。石破茂首相は経済政策で岸田政権の路線を継承する姿勢を明確にしている。岸田氏は新NISAに続く改革を推進することで資本市場の活性化を図り、政策面で政権を支援する姿勢を示した形だ。
確定拠出年金の大幅拡充を緊急提言-岸田前首相ら資産運用立国議連
1月に制度改革が実行されたNISAは利用者が急増したが、年後半にさしかかると新規口座開設のペースは鈍化している。ただ、日本銀行が掲げる2%の物価目標実現を見据える中、岸田氏は物価上昇により投資に資金がシフトする機運は維持されると指摘。今は国民に資産形成を促す「好機」との認識とも述べ、「5年間で3400万口座」の政府目標達成に自信を示した。

資産運用立国議連
岸田氏は自民党の資産運用立国を進める議員連盟の会長を務めている。岸田政権下での取り組みは、米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が昨年10月、「日本は驚異的な経済的変貌の途上にある」と評価。同議連で海外投資家との対話のあり方などをまとめた提言を来年3月にも政府に提出する。
岸田氏は貯蓄から投資への取り組みを「国際社会にアピールする必要がある」と強調。石破政権には同時に、労働市場改革や半導体など戦略物資への重点投資も求めていく方針で、「日本全体の資金の流れを変える」と述べた。「努力を続ければ、日本市場の魅力は高まり続ける」との見方も示した。
資産運用立国へ、日本経済は「驚異的に変貌」-ブラックロックCEO

日韓関係
岸田政権は元徴用工問題などで戦後最悪ともいわれた日韓関係を改善させた。尹錫悦大統領との間で互いの国を頻繁に訪問する「シャトル外交」を再開。石破首相も既に2回首脳会談を開いた。ただ、戒厳令宣布と解除による政治的混乱で、野党が尹大統領への弾劾訴追案を国会に提出しており、日韓関係の先行きも不透明となっている。
岸田氏は「韓国の政治が安定していくことは、日韓関係を前に進めていくためにも大事だ」と指摘。早期の混乱収拾への期待感を示し、経済・外交・安全保障面で日韓が連携して対応する環境作りに自らも尽力する考えを示した。国際社会が「ポスト冷戦時代後の新たな秩序を模索」する中、日韓が協調していく努力が必要と訴えた。
トランプ政権
米国では来年1月に第2次トランプ政権が発足する。岸田氏は米新政権の外交政策は、国際協調から「2国間の駆け引き」に軸足が移る可能性を指摘。日本は米国への最大の投資国であり、「米経済社会に大きなプラスになる」存在だと理解を得る対話が必要だと述べた。
日米関係が、経済・安全保障の「基軸」であるとの考えを示し、環境整備に向けて国会議員の1人として「汗をかきたい」との姿勢も示した。
日本製鉄によるUSスチールの買収計画については、「具体的言及は控えるべき」だとしながらも、「日本企業は米国の雇用創出に貢献している」と言及。米側には日米経済連携の「未来の姿にマイナスにならない判断をしていただきたいと強く願っている」と述べた。
(岸田氏の発言を追加し、更新しました)
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