公明党の岡本三成政調会長は、年内を目指す防衛増税の開始時期の決定について、柔軟に対応することも「十分ある」との考えを明らかにした。衆院で与党が過半数割れする中、調整次第で先送りする可能性を示唆したとみられる。

28日のブルームバーグとのインタビューで語った。岡本氏は防衛増税について「開始時期をいつにするかという判断なので、やることは決まっている」と強調。「今年決められたら素晴らしいことだが、決められなかったからと言って、防衛力の増強が止まってしまうということではない」と述べた。税制改正の手続きが多層化する中、優先順位のより高い項目を確実に実行する必要があるとも語った。

防衛増税の扱いは年末の税制改正で焦点の一つとなっている。石破茂首相は年内に決着させる考えを示していたが、与党と政策協議を進める国民民主党は増税に否定的で自民党内の一部に停止論もある。衆院で与党が過半数割れしたことで政策決定の過程は一変しており、岡本氏の発言は反対論とは一線を引きつつも、政治状況に配慮する姿勢を示した形だ。

政府は法人税、所得税、たばこ税からなる防衛増税を「24年以降の適切な時期」から複数年かけて段階的に実施する計画だ。27年度に1兆円を確保する予定だが、24年度は見送られた。防衛力強化の財源の大半は、決算剰余金や歳出改革、税外収入などを活用する「防衛力強化資金」を充てる方針だ。岡本氏は政府の中で積み立てるべき資金は毎年、確保しているとの認識も示した。

NHKの報道によると、自民の宮沢洋一税制調査会長も今回の論議で最終的な結論を出さなければいけないと述べる一方、国民民主との協議も必要だと指摘している。

党勢回復が課題

10月の衆院選で公明は石井啓一前代表らが落選するなど改選前に32あった議席数を24に減らした。比例の得票数も596万票と2000年以降で最少となり、来年の参院選や東京都議選に向けた党勢の回復が課題だ。衆院選では自民、公明両党が議席を減らす一方、交流サイト(SNS)などを積極的に活用して「手取りを増やす」経済政策を訴えた国民民主は議席を4倍に増やした。

岡本氏は、公明も選挙公約で手取りを増やす政策を掲げていたものの、「シンプルに明確にメッセージを伝えることができなかったことが反省だ」と振り返った。

政府の総合経済対策では、公明が提言した低所得世帯などへの給付が盛り込まれた。今後は幅広い世帯へ支援を届けるため、所得税の発生する「年収103万円の壁」の引き上げは意味があるとした。財源などを考慮しながらも、政策調整の過程で「上げられるだけ上げてください」と提案していることを明らかにした。

 

59歳の岡本氏は衆院東京29区選出で当選5回。ゴールドマン・サックス証券出身で政界進出後は外務政務官、財務副大臣などを歴任している。9月の役員人事で政調会長に就任し、党内では将来の代表候補の1人として名前が挙がる。

ゴールドマン時代には実業家だったトランプ次期米大統領との会議に出席した経験もあり、「勘が素晴らしい方」と評価した。石破首相には自らの言葉で考えを伝え、「腹を割って何でも話せる」ような信頼関係を構築するよう期待感を示した。

他の発言

  • 簡素化していくことも重要-年収の壁
  • 実質賃金が2%程度のプラスで安定するのは遠い将来ではない、それまで何かしらの生活者支援が必要
  • 毎年4-6%程度の賃上げが行われる肌感覚がある
  • 金融政策の手段をどうするか、政治が介入することは越権行為だ

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