(ブルームバーグ):トランプ次期米大統領が中国などからの輸入品に関税を課す計画をソーシャルメディアに投稿したことで、ATグローバル・マーケッツのチーフアナリスト、ニック・トワイデール氏の電話は鳴りやまなくなり、あわてた同氏はキーボードの上にコーヒーをこぼしてしまった。
トランプ氏の投稿でドルが急騰した後、為替取引歴26年のベテランのトワイデール氏は「ソーシャルメディアへの投稿が繰り返されるという最悪のデジャブだ。マッスルメモリーが作動した」と語った。
「トランプ氏の下での次の4年間には、外為市場で金を稼ぐチャンスがたっぷりある」と述べた。同氏はこぼれたコーヒーを拭きながらでも、メキシコ・ペソとオーストラリア・ドルのショートポジションで利益を上げた。
トワイデール氏と同じ期待は、トランプ氏の帰還とそれに伴う市場のボラティリティーに備えるトレーダーたちの間でますます高まっている。

次期米大統領が自身のソーシャルメディアサイト「トゥルース・ソーシャル」で中国、メキシコ、カナダに対する関税の計画を示した後、投資家は同氏が引き起こすボラティリティーを垣間見た。
トランプ氏がメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課すと表明したことで、両国の通貨は対ドルで1%以上下落し、外国為替市場のボラティリティーは拡大した。オフショア人民元をはじめ幅広い新興国通貨がドルに対して下落した。
ニューヨークでは、このニュースが流れるとトレーダーやアナリストが慌ててパソコンに向かった。顧客にドル買い・メキシコ・ペソ売りポジションを検討するよう勧めていたバークレイズのストラテジスト、エリック・マルチネス・マガナ氏もその1人だった。

「トランプ氏は移民政策と関税政策の変更について真剣であり、メキシコが直接的な標的となっている」とマガナ氏は語った。同氏は、ペソがさらに下落し、1ドル=21.50ペソに向かうと予想している。
アジアの株式市場も、トレーダーたちがニュースを消化する中で圧力を受け、特に電子機器や機械などの輸出品に関連した銘柄が大きな打撃を受けた。
シンガポールのヘッジファンド、ブルー・エッジ・アドバイザーズでマーライオン・ファンドの運用に携わるカルビン・ヨー氏は、「株式市場の取引は障害物競走のようなものだが、トランプ大統領の下では『迫撃砲の攻撃を受けながら』行うようなものだ」と述べた。
トゥルース・ソーシャルにおけるトランプ氏の投稿に続く価格乱高下は、同氏のコメントがどれほどボラティリティーを引き起こし、それがどれほど広がる可能性があるかを思い知らせ、トレーダーらを震撼(しんかん)させた。
前回の米大統領任期中にトランプ氏が行った時間帯を問わない投稿は、時に突然の市場の変動を引き起こし、世界中の投資家の就業時間や睡眠スケジュールを一変させた。
マネックス証券の債券・為替トレーダー、相馬勉氏は、トランプ氏の復帰により市場がさらに乱高下することに対して身構えている1人だ。「非常に商売としてはやりやすい、いい環境というところだと思う。一個一個のニュースに為替は反応する」と同氏は語った。
シンガポールではストレーツ・インベストメント・マネジメントのマニッシュ・バルガバ最高経営責任者(CEO)が、今後数か月の間、世界中のトレーダーの間で人気が高まりそうな行動を取った。トゥルース・ソーシャルに登録し、トランプ氏のソーシャルメディア投稿をより注意深く監視できるようにすることだ。
「トランプ氏の投稿を注意深く監視することは不可欠だ。同氏はこれまで、自身の率直な考えや政策方針をソーシャルメディアで発信してきた。今後も同様のパターンが予想される」とバルガバ氏は述べた。
原題:‘Déjà Vu’ Jolts Traders Across Markets on Trump Tariff Redux(抜粋)
--取材協力:グラス美亜.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.