世界のベストレストラン番付の発表は通常、1軒が選ばれるのが一般的だ。しかし、アルゴリズムを使用する「ラ・リスト」では今年、9軒がトップの座に輝いた。

最高評価を受けたのは、米国の「ル・ベルナルダン」と「シングルスレッド」、英国の「ランクリム」、スイスの「Cheval Blanc by Peter Knogl」、フランスの「ラ・ヴァーグ・ドール」と「ギ・サボワ」、ドイツの「シュヴァルツヴァルトシュトゥーベ」、日本の「松川」、香港の「龍景軒」で、いずれも評価は99.5。

英国の湖水地方にあるランクリムのオーナーシェフ、サイモン・ローガン氏は「英国の料理界を代表して、このような世界的な舞台に立つことは意義深いことだ」と述べた。ランクリムは昨年も他の5軒と共に最高評価を獲得している。

香港の龍景軒

番付公表開始から9年目を迎えるラ・リストの評価手法は他のランキングとは異なる。有名なミシュランガイドのように匿名の審査員に頼るのではない。また、世界のベスト50が採用しているような個々の投票者の票次第でもない。パリに拠点を置くラ・リストは、新聞や雑誌、ガイドブック、ブログからのレビューを総合した約1100のソースを収集。アルゴリズムを使用し、79カ国の1000軒のレストランの番付を行う。番付創設者らは、この方法がより客観的な番付作成方法だと主張している。

結果は意外なものではない。リストの大半は、世界の都市で最も有名なレストランの一覧のようで、最も多く話題にされる店が並ぶ。

しかし、ラ・リストはデータを別の方法でも活用しており、急成長中の料理シーンを持つ国の認定も行う。今年選ばれたのはイングランドで、共同創設者で編集長でもあるヨルグ・ジプリック氏は、長期的な成長に基づいた評価だと説明。英国の軌跡は、過去20-30年間にわたっておおむね「著しい変貌を遂げている」と指摘した。

ロンドンのレストラン「コア・バイ・クレア・スミス」のシェフ、クレア・スミス氏も同意見で、「この10年間でに国内全般に素晴らしい美食の成長が見られた」と言う。コア・バイ・クレア・スミスは、ラ・リストの番付で5位の評価を受けた28軒のうちの一つ。

ジプリック氏によると、ラ・リストはデータを利用し長期的トレンドを特定している。その一つは美食家が望むものと、シェフが重視しているものとの乖離(かいり)だ。こうした不満は長年くすぶっていたが、ラ・リストのデータでそれが裏付けられるようになった。これを受け、ラ・リストは「ショウ・トゥ・テーブル」カテゴリーを新設し、ゲスト体験を最優先する施設を認定。受賞施設には、パリの「Bœuf sur le toit」やドバイの没入型美食スポット「Krasota」などが含まれる。

だが、課題は依然として残る。「この1年は、前例のない閉店の波が押し寄せた。この変容はトップ1000番付に明確に表れている」とジプリック氏は指摘。シドニーの「Tetsuya’s(テツヤズ)」などが家賃高騰やコロナ禍での負債の返済期限到来、食材・人件費の高騰などの理由でリストから脱落したと話した。

一部のアイコン的な飲食店が行き詰まった一方で、「史上最も多様性に富んだダイニングシーン」において他のレストランが分野を再定義しているのは朗報だとジプリック氏は話す。常に拡大を続ける美食の世界は、カザフスタンなどの国々を高級料理の地図に登場させることにつながっているという。

原題:Nine Restaurants Claim the Title of World’s Best, La Liste Says(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.